訪日外国人観光客数が急増する中、ホテルや旅館の運営者の皆さんは適切なインバウンド対策に取り組めているでしょうか。2024年の訪日外国人観光客が3,687万人(前年比+47.1%)に達しており、宿泊業界にとって大きなビジネスチャンスが到来しています。
参考しかし、多くのホテル・旅館では言語の壁や文化的な違い、デジタル化の遅れなどが原因で、インバウンド需要を十分に取り込めていないのが現状です。特に地方の宿泊施設では、外国人観光客への対応に不安を感じている経営者も少なくないでしょう。
本記事では、ホテル・旅館が今すぐ実践できる効果的なインバウンド対策を7つのポイントに分けて詳しく解説します。多言語対応からキャッシュレス決済、SNSを活用した集客戦略まで、具体的な手法と成功事例をもとに、訪日外国人観光客の満足度向上と売上拡大につながる実践的なノウハウをお伝えします。
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インバウンド対策の前に、現在の訪日外国人観光客の動向を把握することが大切です。コロナ禍からの回復状況と今後の予測を認識することで、対策の必要性を理解できます。
日本政府観光局(JNTO)の最新データによると、2024年の訪日外客数は3,600万人を突破し、コロナ前の2019年(3,188万人)を大きく上回る水準に達しています。さらに、2025年4月には単月では過去最高となる390万人を突破する勢いを見せています。
参考政府は2030年までに訪日外客数6,000万人という目標を掲げており、今後もさらなる訪日外国人観光客数の増加が予想されます。地域別では、東アジア(中国、韓国、台湾)が全体の約60%を占める一方、欧米豪からの訪問者も着実に増加しており、多様化するマーケットへの対応が求められています。
参考観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は約8兆円に達しており、このうち宿泊費が占める割合は約30%で、宿泊業界にとって非常に大きな市場となっています。
参考特に注目すべきは、訪日外国人の1人あたり平均宿泊単価が日本人宿泊客よりも高く、収益に大きく寄与している点です。また、多くが長期滞在であるため、宿泊施設にとっては客室稼働率の向上にも貢献しています。
ホテル・旅館が効果的にインバウンド需要を取り込むためには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、今すぐ実践できる7つの対策をご紹介します。これらの対策は、外国人観光客の満足度向上と宿泊施設間での競争力強化の両方を実現できる手法です。
人材不足が深刻な宿泊業界では、多言語対応を人的リソースに依存するのではなく、システムやツールを活用することが現実的な解決策です。チェックインシステム、客室内タブレット、館内案内システムの多言語化により、24時間体制での外国人観光客対応が可能になります。
特にAI搭載のチャットボットは、基本的な質問対応から予約変更まで幅広い業務をカバーできるため、スタッフの負担軽減と顧客満足度の向上を実現できます。初期導入コストはかかりますが、長期的な人件費削減効果を考慮すると投資対効果は高いといえるでしょう。
観光庁の「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」によると、外国人観光客が不便を感じることの一つが交通情報と観光情報の不足です。パンフレットや館内案内、周辺観光スポットの情報を多言語で用意することで、この課題を解決できます。
特に地方の宿泊施設では、公共交通機関の利用方法や地域の隠れた魅力スポットを外国語で紹介することで、他施設との差別化を図ることができます。QRコードを活用してスマートフォンで多言語情報にアクセスできるシステムも、印刷コストを抑えながら効果的な情報提供を実現する方法として注目されています。
海外ではキャッシュレス決済が主流となっており、現金での支払いに慣れていない外国人観光客が多数います。クレジットカード決済はもちろん、PayPal、Alipay、WeChatPayなどの国際的な電子決済サービスに対応することで、決済時のストレスを大幅に軽減できます。
さらに重要なのが、公式サイトでの多通貨料金表記と多通貨決済の対応です。外国人観光客は自国通貨での料金表示を求める傾向が強く、米ドル、ユーロ、韓国ウォン、中国元など主要通貨での料金表記により、予約時の利便性が大幅に向上します。多通貨決済システムの導入により、為替レートを気にせずに予約できる環境を整えることで、予約率の改善と直接予約の増加が期待できます。
また、非接触決済の需要も高まっており、衛生面への配慮としても評価されます。キャッシュレス決済の導入は、外国人観光客の利便性向上だけでなく、現金管理業務の効率化にもつながるため、一石二鳥の効果が期待できます。
システム化では対応しきれないコミュニケーションには、外国語対応スタッフの配置が不可欠です。英語、中国語、韓国語は訪日観光客数の多い国の言語として優先的に対応したい言語です。採用が困難な場合は、翻訳アプリやウェアラブル翻訳デバイスを活用することで、既存スタッフでも基本的な対応が可能になります。
スタッフ教育では、言語スキルだけでなく文化的な違いへの理解も大切です。挨拶の仕方、食事のマナー、宗教的な配慮など、国や地域によって異なる慣習を理解することで、より質の高いおもてなしを提供できます。
海外では「部屋単位」での宿泊予約が一般的であるため、日本特有の「食事付きプラン」の内容を分かりやすく説明する必要があります。また、和食や温泉といった日本文化を体験できるプランは外国人観光客に人気が高く、付加価値の高いサービスとして訴求できます。
宗教的な配慮も重要で、ハラルフードやベジタリアン向けの食事オプション、アレルギー対応メニューを用意することで、より多様な外国人観光客を受け入れることができます。これらの配慮はクチコミでの評価にも直結し、新規顧客の獲得につながります。
Instagram、Facebook、TikTokなどのSNSプラットフォームは、外国人観光客が宿泊施設を選択する際の重要な情報源となっています。特にInstagramでの写真投稿は、視覚的に施設の魅力を伝えるのに効果的な手段です。
翻訳ツールを活用することで、多言語での情報発信も比較的簡単に行えます。大切なのは、自施設ならではの独自性や地域の魅力を強調することです。定期的な投稿と外国人観光客との積極的なコミュニケーションにより、ブランド認知度の向上と直接予約の増加が期待できます。
多言語対応のホームページと予約システムは、インバウンド対策の基盤となる重要な要素です。よくある質問(FAQ)の多言語設置、チャットボットによる24時間サポート、分かりやすい料金体系の表示などにより、予約率の改善が期待できます。
内製化が難しい場合は、外部の専門業者に委託することも検討しましょう。初期投資は必要ですが、長期的な予約数の増加を考慮すると、費用対効果の高い投資といえるでしょう。
インバウンド対策の実施には一定の投資が必要ですが、国や自治体が提供する補助金制度を活用することで、導入コストを大幅に削減できます。
ここでは、東京都の事例を紹介しますが、利用できる補助金は、年度や自治体によりさまざまです。応募期間も短く、申請を早めに締め切るものもあるため、観光庁や管轄の自治体のホームページを常にチェックして、情報収集を怠らないようにしましょう。
東京観光財団が実施する「インバウンド対応力強化支援補助金」は、東京都内の宿泊施設を対象とした支援制度です。最大300万円まで(費用の50%以内)の補助が受けられ、多言語対応システムの導入、人材育成、キャッシュレス決済システムの整備などが対象となります。
この補助金は申請要件が比較的緩やかで、中小規模の宿泊施設でも利用しやすい制度となっています。申請書類の準備や手続きに時間はかかりますが、費用負担を少しでも抑えるために積極的な活用をおすすめします。
理論だけでなく、実際にインバウンド対策で成果を上げている宿泊施設の事例から、具体的な対策を検討することができます。ここでは、2つの宿泊施設における成功事例をご紹介します。
創業350年を誇る老舗温泉旅館「城崎温泉 三木屋」では、triplaの予約エンジン「tripla Book」を導入し、多言語対応や多通貨決済に対応ができるようになった結果、予約全体の25%を海外からの予約が占めるようになりました。
多通貨決済に対応できたことで、忘れ物をお届けする際の支払いなど、細かな金銭のやり取りがスムーズになったなどの効果が出ています。
さらに、AIチャットボット「tripla Bot」を導入し、外国人宿泊客からのよくある質問や要望を可視化したことで、サービス改善や新たなマーケティング施策の立案にも役立っています。
参考「奥道後 壱湯の守」では、triplaの提供するAIチャットボット「tripla Bot」を導入し、フロント業務の負担軽減とスムーズな外国人対応を実現しています。
特に、コロナ禍以降は、もともと在籍していた外国人スタッフが帰国してしまい、フロントスタッフが電話対応に苦慮していたところ、多言語対応のチャットボットを導入したことで、顧客とのスムーズなコミュニケーションが維持できるようになりました。
また、客室ごとにチャットボット専用のQRコードを設置することで、チャットでの問い合わせ機会が増え、結果的に電話によるお問い合わせが2割程度減り、フロントスタッフの負担軽減につながっています。
参考インバウンド対策の実践には、将来の市場動向を理解し、中長期的な視点での計画が大切です。ここでは、2025年以降のインバウンド市場の動向と、宿泊施設が注目すべきトレンドをご紹介します。
サステナブルツーリズムへの関心が世界的に高まっており、環境に配慮した宿泊施設の選択が外国人観光客にとっての判断基準のひとつとなってきています。省エネルギー設備の導入、地産地消の推進、廃棄物削減への取り組みなど、環境負荷軽減に向けた具体的な行動が求められています。
これらの取り組みは、環境意識の高い外国人観光客からの支持の獲得と、長期的な運営コスト削減の両方を実現する施策として位置づけることができます。
画一的なサービスではなく、個々の顧客の好みや興味に合わせたカスタマイズされた体験への需要が高まっています。AI技術を活用したパーソナライズされた観光プラン提案、個人の食事制限や好みに対応したメニュー提供などがポイントになってきます。
このトレンドに対応するためには、顧客データの収集と分析能力の向上が必要で、デジタル化への対応が鍵となります。
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を活用した体験提供、IoT機器による客室環境の最適化、顔認証技術を使った非接触チェックインなど、最新テクノロジーの活用が今後のトレンドとなっていきます。
これらのテクノロジーは、外国人観光客にとって新鮮で印象的な体験を提供するだけでなく、運営効率の向上にも寄与するため、積極的な導入検討が推奨されます。
インバウンド需要の急増により、宿泊業界には大きなビジネスチャンスが到来しています。多言語対応システムの導入、キャッシュレス決済の整備、SNSを活用した情報発信など、今回ご紹介した7つの対策を実践することで、外国人観光客の満足度の向上と売上拡大を同時に実現できます。
ポイントは、人材不足という制約の中でも、デジタルツールを効果的に活用することで質の高いサービスを提供することです。補助金制度を活用することで初期投資を抑えながら、段階的にインバウンド対策を強化していくことが現実的なアプローチといえるでしょう。
2025年以降も続くインバウンド需要の拡大に向けて、今こそ戦略的なインバウンド対策に取り組み、持続的な成長につなげていきましょう。
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