多言語対応はどこまで行う?ホテル・旅館での実践法を詳しく解説

訪日外国人の増加に伴い、ホテルや旅館での多言語対応は欠かせない取り組みとなっています。観光庁の調査によると、15.2%の訪日外国人が「スタッフとのコミュニケーションが取れない」と回答しており、多言語対応の重要性が浮き彫りになっています。しかし、多くの宿泊施設では「どこまで対応すればよいのか」「何から始めるべきなのか」といった疑問を抱えているのが現状です。本記事では、効果的な多言語対応の実践法と、施設規模に応じた段階的なアプローチについて詳しく解説します。

triplaでは、宿泊業務の効率化と顧客体験向上のためのデジタルツールを横断的に提供しています。多言語対応やインバウンド対応の課題について、専任のスタッフに気軽にご相談(無料)ください。

訪日外国人が直面する言語の課題

まずは、訪日外国人が実際にホテルや旅館で感じている不便さを確認しましょう。観光庁の『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』によると、言語の課題が鮮明になっています。

スタッフとのコミュニケーション

調査結果では、15.2%の訪日外国人が「スタッフとコミュニケーションが取れない」と回答しており、これが「ゴミ箱の少なさ(21.9%)」に次いで困ったこととして挙げられています。特に注目すべき点は、アンケートの回答者の約7割が訪日回数2回以上のリピーターであり、来日のたびに言語の課題を感じていることを意味します。

参考

さらに、こうした困った場合の対応として、自動翻訳システムや翻訳アプリケーションを活用することで対処した割合が7割以上に達している点も注目すべき点です。

多言語表示の少なさ、分かりにくさ

10.8%の訪日外国人が「多言語表示が少ない・分かりにくい」と感じており、訪日回数が増えても継続的に不満を感じています。観光庁の「観光DX推進のあり方に関する検討会」でも指摘されているように、単純な翻訳だけでなく「内容が分かりやすいかどうか」までが重要視されています

館内サイネージや外国語案内表示を設置する際は、ピクトグラムを活用したユニバーサルデザインを取り入れるなど、より多くの人に理解されやすい情報の表示・提供が求められます。

施設情報の入手・予約の難しさ

6.5%の外国人が飲食店、宿泊施設の情報の入手・予約の難しさを感じており、7.8%がクレジットカードの利用のしにくさを指摘しています。これらの課題は、多言語対応のWebページや予約システムの導入により大幅に改善できる分野でもあります。

また、海外主要ブランドに対応した決済システムの整備と、多言語によるSNSでの情報発信などは、訪日外国人への対応として必要な要素となっています。

ホテル・旅館における多言語対応の実践方法

多言語対応を進める際は、限られた予算と人員のなかで効果が得られやすいものから段階的に進めていく必要があります。ここでは、実践的な方法を解説します。

施設内案内の多言語化

館内の基本的な案内表示は、ニーズが高く、多言語化に取り組みやすい部分です。トイレ、エレベーター、非常口などの基本的な館内表示について、ピクトグラムを組み合わせながら多言語表示に切り替えると効果も高くなります。

対応すべき言語は、英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語が一般的で、訪日外国人の大部分をカバーすることができます。triplaでは日本語を含め8言語(英語、韓国語、中国語繁体字、中国語簡体字、タイ語、インドネシア語、アラビア語)に対応したサービスを提供しており、より幅広い訪日観光客のニーズに応えることができます。

また、この段階では、翻訳アプリを活用したスタッフ研修も並行して行い、基本的な接客フレーズを習得することも大切です。ハイレベルな語学力は必要なく、おもてなしの心を伝えるコミュニケーション技術を身に付けましょう。

Webサイトと予約システムの多言語化

Webサイトと予約システムは、外国人ゲストの最初の接点となるため、多言語化対策の最優先部分です。単純な翻訳だけでなく、国際空港からのアクセス情報や地域の観光スポット情報など、外国人向けのコンテンツを強化する必要があります。

予約システムでは、日本語の更新情報と連動して多言語側でも更新する運用体制が大切になります。また、「宿泊プラン」という日本特有のサービスは外国人には馴染みがないため、プラン内容の丁寧な解説や予約フローを外国人向けに最適化するなどの工夫が必要です。

チャットボット導入とFAQの多言語対応

外国人がよく質問する内容として、チェックイン・チェックアウトの手続き、大浴場の使用方法、館内設備の場所などがあります。これらの対応の一部を多言語対応のチャットボットが担うことで、スタッフの負担軽減につながります。

FAQ(よくある質問)の多言語化は比較的低コストで実現でき、即効性の高い対策です。アンケートなどにより顧客ニーズを把握しながら、FAQの内容を充実させていくことが効果を高めるポイントです。また、更新されたFAQはスタッフ間での共有、Webサイトへの掲載など幅広く活用することも大切です。

多言語対応の料金表示と決済システムの導入

外国人ゲストの利便性と予約完了率を向上させるために、多通貨での料金表示と多通貨決済への対応が非常に効果的です。現地通貨で宿泊費を表示することで、為替換算を考慮する必要がなくなり、離脱防止につながります。

また、多通貨決済が可能となることで、海外発行クレジットカードの決済時エラーによる取りこぼしが大幅に減少し、クレジットカード承認率の向上が期待できます。これにより自社予約数の増加と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

triplaの予約エンジン「tripla Book」では、多言語対応に加えて32通貨での決済に対応しており、外国人ゲストが自国通貨で料金を確認し、スムーズに予約を完了できる環境を提供しています。

外国語対応スタッフの採用・教育

デジタルツールがいくら普及しても、ツールでカバーできない部分は人によるサポートが必要です。外国人スタッフの採用や日本人スタッフの研修などにより、多言語対応ができるスタッフが配置できれば、利用者の安心感や満足度の向上につながります。

外国人スタッフの採用や人材育成のための公的な補助金や助成金はいくつか整備されているため、これらを活用して将来を見据えた運営体制を整えていくことも大切です。

成功事例に学ぶ実践ノウハウ

実際に多言語対応で成果を上げている宿泊施設の事例を参考にすることで、自社に適した施策を見つけることができます。ここでは、システム導入により目に見える成果を挙げた事例をご紹介します。

株式会社ホテルマネージメントジャパンにおける事例

「オリエンタル」「ヒルトン」などの多様なホテル経営を行う「株式会社ホテルマネージメントジャパン」では、triplaの多言語対応の予約エンジン「tripla Book」を導入し、目標を超える会員登録者数の獲得に成功しています。

多言語対応の機能と海外向けの広告配信機能の掛け合わせにより、海外の顧客に対してもアプローチができるようになりました。その結果、海外からの会員登録数の増加とともに、自社予約の伸びにもつながっています。

参考

奥道後「壱湯の守」における事例

「奥道後 壱湯の守」では、triplaの提供するAIチャットボット「tripla Bot」を導入し、フロント業務の負担軽減とスムーズな外国人対応を実現しています。

特に、コロナ禍以降は、もともと在籍していた外国人スタッフが帰国してしまい、フロントスタッフが電話対応に苦慮していたところ、多言語対応のチャットボットを導入したことで、顧客とのスムーズなコミュニケーションが維持できるようになりました。

また、客室ごとにチャットボット専用のQRコードを設置することで、チャットでの問い合わせ機会が増え、結果的に電話によるお問い合わせが2割程度減り、フロントスタッフの負担軽減につながっています。

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多言語対応における注意点

これまでの解説のとおり、案内表示やシステム導入などの多言語対応を実践する際には、いくつか注意すべき点があります。ここでは、失敗を避けるためのポイントを整理してご紹介します。

文化的な配慮

多言語対応は単なる言語の翻訳だけでなく、文化的な配慮が必要です。例えば、靴を脱ぐ習慣がない国の方への説明や、温泉・大浴場の利用方法など、日本人と同じ説明をしてしまうと理解が得られない場合があります。日本文化の背景を織り交ぜながら、興味を持ってもらえるような説明を心掛けましょう。

このような配慮すべき点は、日本人の感覚だと気付きにくい場合があります。対策としてアンケート調査やオンラインレビューの分析を通じて、実際のニーズを汲み取ることが大切です。多言語対応の目的のみではなく、外国人ゲストへのサービス向上の一環として実施するとよいでしょう。

スタッフ教育と体制整備

デジタルツールの導入のみでなく、スタッフの語学力と異文化への理解は不可欠です。相手の文化や価値観を理解し、適切なコミュニケーションとホスピタリティで対応できるスタッフは貴重な存在です。完璧な語学力は必ずしも必要ではありません。

また、対応マニュアルや、専門的な質問に対する多言語での説明資料も整えるようにしましょう。スタッフが自信を持って外国人ゲストに対応できる環境を整えることで、サービスの向上と組織のレベルアップにもつながります。

まとめ

多言語対応は、訪日外国人の15.2%が感じているコミュニケーションの課題を解決し、顧客満足度の向上につながる取り組みです。英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語を優先して、館内表示、Webサイト、予約システムなど、ニーズの高い部分から導入を進めるようにしましょう。

成功のポイントは、単なる翻訳ではなく、相手側の慣習や文化に配慮した上での案内表記やスタッフの対応です。外国人ゲストのニーズを継続的に汲み取ることで、多言語対応をはじめとしたインバウンド対策の強化にもつながります。質の高いサービスにより、外国人ゲストからの高い評価と集客力アップを実現できるでしょう。

triplaでは、宿泊業務の効率化と顧客体験向上のためのデジタルツールを横断的に提供しています。多言語対応やインバウンド対応の課題について、専任のスタッフに気軽にご相談(無料)ください。