ホテル・旅館経営の利益率を上げるためのポイント|重要な注意点と手法

ホテルや旅館の経営において、利益率の向上は持続的な成長に欠かせない重要な課題です。宿泊業界では固定費の比重が大きく、原価管理や人件費の最適化が利益に直結するため、収益構造を正確に理解したうえで戦略的な施策を実施する必要があります。

本記事では、利益率の定義と計算方法から、収益を高めるための具体的な施策、財務指標を用いた評価方法まで、宿泊施設の運営者が実践できる包括的なアプローチを詳しく解説します。

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ホテル経営における利益率の定義と計算方法

ホテルや旅館の経営状況を正確に把握するためには、利益率という指標を正しく理解することが不可欠です。利益率は単なる数字ではなく、経営の健全性や効率性を測るための重要なものさしとなります。ここでは、利益率の基本的な考え方と、宿泊業界における標準的な計算方法について詳しく見ていきます。

利益率とは何かを明確にする

利益率とは、売上高に対してどれだけの利益を得られたかを示す割合のことです。宿泊業界では、この指標を用いて経営の効率性や収益性を評価します。利益率が高いほど、同じ売上でもより多くの利益を確保できていることを意味し、経営の安定性が高いと判断されます。

財務総合政策研究所の「法人企業統計調査」によれば、平成30年度は全産業の平均利益率が4.4%であるのに対し、宿泊業は3.7%と低い水準にとどまっています。さらに令和4年度の統計では、全体営業利益率が4.01%であるのに対し、宿泊業は-0.87%となっており、業界全体が厳しい経営環境にあることが明らかです。このような状況下では、利益率の改善が経営の最優先課題となります。

営業利益率と純利益率を区別する

利益率には複数の種類があり、それぞれ異なる視点から経営状況を評価します。主なものとして、営業利益率と純利益率があります。営業利益率は本業の収益力を示す指標であり、売上高から売上原価と販売費および一般管理費を差し引いた営業利益を、売上高で割って算出します。この指標は、ホテルや旅館の日常的な営業活動がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを表します。

一方、純利益率は営業外損益や特別損益、税金などをすべて考慮した最終的な利益を売上高で割ったものです。純利益は企業が最終的に手元に残す利益であり、株主への配当や内部留保の原資となります。宿泊業では営業利益率を重視する傾向がありますが、金融費用や設備投資の減価償却費なども考慮した純利益率の把握も重要です。

利益率の具体的な計算式を示す

営業利益率の計算式は以下のとおりです。

営業利益率(%)=(営業利益÷売上高)×100

営業利益は、売上高から売上原価を引いた粗利益から、さらに販売費および一般管理費を差し引いて求めます。宿泊業における売上原価には食材費やリネン費などが含まれ、販売費および一般管理費には人件費、広告宣伝費、水道光熱費、修繕費などが含まれます。

たとえば、年間売上高が1億円のホテルで、売上原価が2,000万円、販売費および一般管理費が7,000万円の場合、営業利益は1,000万円となり、営業利益率は10%となります。この10%という数字が、宿泊業界では一般的に合格水準とされています。

業界平均とベンチマークを比較する

宿泊業界における利益率の目安として、一般的に10%程度が合格水準、20%が目標水準とされています。これは、一般社団法人日本ホテル協会が2021年度のホテル業の平均利益率を9.3%と公表し、また日本政策金融公庫が2022年度の旅館業の平均利益率を10.0%と発表したことに基づいています。

しかし、株式会社リョケンの「2023年の営業状況と財務・損益状況調査」によると、宿泊業の平均営業利益率はわずか1.0%にとどまっています。コロナ禍の2021年頃は、稼働率が低くても雇用調整助成金などの特例的な支援策によって見かけ上の利益が確保されていましたが、こうした救済措置が終了した現在は「本業の実力」が問われるフェーズに入りました。

現在はインバウンド需要等で売上が回復しているものの、人件費や水道光熱費、食材費の高騰が利益を大きく圧迫しています。そのため、漫然とした経営では利益を残すことが難しく、大手チェーン企業が20%近い利益率を出す一方で、多くの中小施設が赤字や低収益に苦しんでいるのが実態です。業界平均(1.0%)に安住せず、コスト構造を見直して10%以上の利益率を目指す明確な目標設定が重要です。

ただし、施設規模や立地、ターゲット層によって利益率は大きく異なります。大手チェーン企業の中には20%を超える高い利益率を達成している施設もある一方で、中小規模の独立系施設では一桁台、または赤字経営が続いているケースも少なくありません。自施設の状況を業界平均と比較しながら、現実的な目標設定を行うことが重要です。

ホテル経営の収益構造と利益率を決める要因

ホテルや旅館の利益率は、複数の要因が複雑に絡み合って決まります。宿泊部門だけでなく、飲食部門や付帯サービスの収益性、固定費と変動費のバランス、さらには需要変動への対応力などが、総合的に利益率に影響を与えます。ここでは、収益構造を構成する主要な要素を詳しく見ていきます。

宿泊部門が利益率に与える影響を解説する

宿泊部門はホテル・旅館の収益の中核を担う部門であり、客室売上が全体の売上に占める割合は施設タイプによって異なりますが、一般的に50%から80%程度を占めます。宿泊部門の利益率を高めるためには、OCC(客室稼働率)とADR(客室平均単価)の両方を最適化する必要があります。これらを掛け合わせた指標がRevPAR(販売可能客室あたりの収益)であり、1室あたりの収益性を表す重要な指標となります。

客室稼働率は、総客室数に対して実際に販売された客室の割合を示し、稼働率が高いほど固定費を効率的に回収できます。一方、客室単価は需要と供給のバランス、競合他社の価格、季節性などによって変動するため、ダイナミックプライシングの導入により最適な価格設定を行うことが重要です。繁忙期には強気の価格を維持し、閑散期には稼働率を優先した価格戦略を取るなど、柔軟な対応が求められます。

飲食部門と付帯サービスの採算性を評価する

飲食部門は宿泊部門に次ぐ重要な収益源ですが、食材費や人件費などのコストが高く、利益率は宿泊部門よりも低い傾向があります。飲食部門では食材費や調理人件費などの原価管理が重要であり、メニュー構成の見直しや仕入先の最適化により収益性を向上させることが可能です。食材ロスの削減、メニュー構成の最適化、仕入先の見直しなどにより、原価率を改善することが可能です。

付帯サービスには、宴会場やスパ、売店、駐車場などがあり、これらは追加収益を生む機会となります。特にスパやマッサージなどのウェルネスサービスは、客単価向上とリピーター獲得の両面で効果的です。付帯サービスの採算性を定期的に評価し、収益性の低いサービスは見直しを行い、高収益のサービスには積極的に投資することが重要です。

固定費変動費と原価率が利益に与える影響

宿泊業は固定費の比率が高い産業であり、人件費、減価償却費、地代家賃、水道光熱費などが固定費として毎月発生します。人件費は施設全体の経費の約30%から38%を占めており、宿泊業界では人件費が経費の大きな部分を占める傾向にあります。年間売上が減少しても固定費は変わらないため、稼働率が低下すると利益が大きく圧迫されます。

変動費には食材費、リネン費、アメニティ費用などがあり、稼働率に応じて変動します。売上高原価率の平均値は業種別に異なりますが、ホテルの場合は約20.6%とされています。原価率を適切に管理するためには、在庫管理の徹底、仕入先との価格交渉、メニュー構成の見直しなどが有効です。

需要変動と季節性が利益率を左右する

宿泊業は季節性の影響を強く受ける産業です。観光地では春の桜シーズンや秋の紅葉シーズン、年末年始などに需要が集中し、ビジネスホテルでは平日の稼働率が高く週末は低いという傾向があります。このような需要変動に対応するためには、繁閑の差を平準化する施策が必要です。

具体的には、閑散期に割引プランやパッケージツアーを提供し稼働率を高める、繁忙期には早期予約割引で需要を先取りする、さらには複数の顧客セグメントをターゲットにして需要の多様化を図るなどの方法があります。また、イベントや会議の誘致により、オフシーズンの需要を創出することも効果的です。需要変動を予測し、柔軟な価格設定と在庫管理を行うことで、年間を通じた利益率の安定化が実現できます。

ホテル経営で利益率を高める施策

利益率を向上させるためには、収益の最大化とコスト削減の両面からアプローチする必要があります。客室稼働率と平均単価の最適化、販売チャネルの戦略的活用、業務効率化によるコスト削減、そしてデジタル化による顧客体験の向上など、複数の施策を統合的に実施することが重要です。

客室稼働率と平均単価で利益率を改善する

客室稼働率と平均単価は、宿泊部門の収益を決定する二大要素です。RevPARを向上させるためには、繁忙期には需要に応じて強気の価格を維持しつつ販売機会を逃さないよう在庫管理を行い、閑散期には稼働率を高めるキャンペーンや団体需要の取り込みを積極的に行う必要があります。ダイナミックプライシングの導入により、需要予測に基づいた柔軟な価格設定が可能となり、収益最大化を実現できます。

さらに、朝食や部屋のアップグレードなど、アップセル・クロスセルによる客単価の引き上げも効果的です。チェックイン時や事前のメールで付加価値サービスを提案し、顧客の利便性を高めながら収益を拡大することができます。また、会員制度やロイヤリティプログラムを導入し、リピーター獲得を促進することで、長期的な収益の安定化が図れます。

販売チャネルと価格戦略で収益を最大化する

販売チャネルの選択は利益率に大きく影響します。OTA(Online Travel Agent)経由の予約は集客力に優れていますが、手数料率が10%から20%程度と高く、利益を圧迫する要因となります。日本旅館協会の調査によると、ネット業者経由の予約が45.3%と約半数を占める一方で、自社ホームページ経由の予約は14.9%にとどまっています。

自社予約比率を高めることで、手数料負担を削減し利益率を改善できます。triplaが提供する「tripla Book」は、OTA並みのUX/UIを備えたSaaS型宿泊予約エンジンであり、会員登録が1分かからずに完了できる簡潔性を実現しています。導入事例では、月間30万円の手数料削減を実現した施設(SARASA HOTEL)や、自社予約比率40%を達成した施設(城崎温泉 三木屋)も存在します。

コスト削減と業務効率化で利益率を向上させる

コスト削減は利益率向上の重要な要素です。特に人件費は経費の大きな部分を占めるため、業務効率化により適正な人員配置を実現することが必要です。セルフチェックイン機や自動精算機の導入、PMS(ホテル管理システム)の活用により、フロント業務を効率化し省人化を実現できます。これにより人件費の最適化につながります。

triplaの提供するAIチャットボット「tripla Bot」は、多言語対応のAIが自動で顧客からの問い合わせに回答することで、従来はメールや電話で対応していた業務量を大幅に削減できます。導入事例では、メール問い合わせが約60%、電話が約40%削減されたと報告されており、フロントスタッフがより重要な顧客対応に注力できるようになります。

水道光熱費などの業務費の削減も重要です。ホテルでは業務費の約15.0%、旅館では16.2%が光熱費などの業務費となっており、LED電球への切り替えや空調の最適化、IoTを活用したエネルギー管理により、コスト削減が可能です。

デジタル化と顧客体験でリピート率を高める

顧客満足度の向上とリピーター獲得は、長期的な収益安定化に不可欠です。デジタル化により顧客体験を向上させることで、リピート率を高め、口コミやレビューによる新規顧客の獲得にもつながります。triplaの「tripla Connect」は、CRM(顧客関係管理)とマーケティングオートメーションの機能を提供し、顧客データの一元管理とセグメント別のマーケティング施策を可能にします。

顧客の宿泊履歴や嗜好を把握し、パーソナライズされたサービスを提供することで、顧客ロイヤリティが向上します。事前メールでの情報提供、チェックイン時のスムーズな対応、滞在中のきめ細かなサービス、チェックアウト後のフォローアップなど、各接点での顧客体験を最適化することが重要です。リピーター獲得により、新規顧客獲得コストを削減し、安定した収益基盤を構築できます。

ホテル経営の財務指標で利益率を定量的に評価する

利益率の改善には、定量的な評価が不可欠です。財務指標を用いて経営状況を客観的に分析し、改善すべき領域を特定することで、効果的な施策を実施できます。ここでは、宿泊業で重要な財務指標とその活用方法について詳しく解説します。

RevPARやADRで収益性を測定する

RevPAR(Revenue Per Available Room)は、1室あたりの収益を表す指標であり、客室稼働率と客室平均単価を掛け合わせて算出します。RevPARは、ホテルのパフォーマンスを総合的に評価する際に最も重要とされる指標です。計算式は以下のとおりです。

RevPAR=ADR×OCC または RevPAR=客室売上÷販売可能客室数

ADR(Average Daily Rate)は客室平均単価を示し、売上金額を販売した客室数で割って算出します。ADRが高いほど、客単価が高く収益性に優れていることを意味します。OCCは客室稼働率であり、稼働した客室数をホテルの総客室数で割って算出します。これらの指標を定期的にモニタリングし、競合他社や業界平均と比較することで、自施設の収益性を客観的に評価できます。

労働分配率や原価率でコスト構造を分析する

労働分配率は、売上高に占める人件費の割合を示す指標であり、コスト管理の重要な要素です。宿泊業では労働分配率が30%から40%程度とされており、この範囲を超える場合は人件費の見直しが必要です。業務効率化やマルチタスク化により、少ない人数でも効率的に運営できる体制を構築することが重要です。

原価率は、売上高に占める売上原価の割合を示します。FLコスト(Food cost & Labor cost)は、飲食部門における食材費と人件費の合計であり、これを売上高で割った比率が重要な管理指標となります。一般的にFLコストは売上高の60%以内に抑えることが望ましいとされています。食材ロスの削減、メニュー構成の最適化、仕入先の見直しなどにより、原価率を改善できます。

キャッシュフローと投資回収期間で健全性を判断する

キャッシュフローは、企業が実際に手元に持つ現金の流れを示す指標であり、経営の健全性を評価する上で重要です。利益が出ていても、キャッシュフローがマイナスであれば、支払能力に問題が生じる可能性があります。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの三つを把握し、資金繰りを適切に管理することが必要です。

投資回収期間は、設備投資や改装にかかった費用を何年で回収できるかを示す指標です。投資回収期間が短いほど、投資効率が高いと評価されます。新規投資を検討する際には、期待される収益増加と投資回収期間を慎重に評価し、投資判断を行うことが重要です。

指標を用いたKPI設定と定期的なモニタリング

経営改善を実現するためには、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングすることが不可欠です。RevPAR、ADR、客室稼働率、労働分配率、原価率などの指標を月次または週次で確認し、目標値と実績値を比較します。目標に達していない場合は、原因を分析し、改善策を迅速に実施することが重要です。

KPIダッシュボードを活用することで、複数の指標を一目で把握でき、経営判断のスピードが向上します。triplaが提供する「tripla Analytics」は、予約状況、売上、マーケティングのデータなど販売価格に関わる重要指標をグラフや図でわかりやすく表示し、データ分析を容易にします。市場動向を把握した競争力のある価格設定と、市場変化への迅速な対応を後押しし、宿泊施設のより戦略的な経営の実現に貢献します。

まとめ

ホテルや旅館の利益率向上には、収益構造の正確な理解と、複数の施策を統合的に実施することが不可欠です。客室稼働率と平均単価の最適化、自社予約比率の向上によるOTA手数料の削減、コスト管理と業務効率化、そして顧客体験の向上によるリピーター獲得など、さまざまな角度からアプローチする必要があります。

特にデジタルツールの活用は、業務効率化と顧客満足度向上の両面で大きな効果をもたらします。triplaが提供する予約システム、AIチャットボット、CRM機能、データ分析ツールなどを統合的に活用することで、中小施設であっても大規模施設と同等の経営効率を実現できます。財務指標を用いた定量的な評価と、KPIの定期的なモニタリングにより、継続的な改善を図ることが、持続的な利益率向上につながります。

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