ホテル・旅館のリピーター戦略!リピート率の高い宿の特徴を解説

宿泊業界の競争が激化する中で、新規顧客の獲得コストが年々上昇しており、多くのホテルや旅館がリピーター戦略の重要性を見直しています。一般に、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの約5倍に上るといわれており、効率的な集客の実現にはリピーター戦略が欠かせません。

そこで、本記事では、ホテル・旅館がリピーターを増やすために取り組むべき戦略と、リピート率の高い宿泊施設の特徴について詳しく解説します。

triplaでは、宿泊業務の効率化と顧客体験向上のためのデジタルツールを横断的に提供しています。リピーター獲得に向けた顧客管理や自社予約比率の向上などのお悩みは専任のスタッフに気軽にご相談(無料)ください。

ホテル・旅館におけるリピーターが重要な理由

宿泊業界におけるリピーター比率やリピーターの重要性について把握することは、効果的な戦略を立てる第一歩となります。ここでは業界全体の動向と、リピーターが宿泊施設の経営に与える影響について詳しく解説します。

宿泊施設の一般的なリピーター比率

公益財団法人日本交通公社の調査によると、37.7%の宿泊施設が「10%以上30%未満」のリピーター比率を報告しており、これが業界の標準的な数値となっています。一方で、リピート率30%以上を誇る施設も存在し、こうした高リピート率施設では安定した客室稼働率を維持しています。

参考

注目すべきは、リピーター比率と客室稼働率には明確な相関関係があることです。リピート率が高い施設ほど繁忙期だけでなく閑散期でも一定の稼働を確保できるため、年間を通じた安定収益の基盤となっています。

リピーターが宿泊施設にもたらす経済効果

リピーターがもたらす経済的メリットは集客コストの削減だけにとどまりません。既存顧客の維持コストは新規顧客獲得コストの約5分の1とされ、限られたマーケティング予算を効率的に活用できます。また、リピーターは記念日プランやアップグレード宿泊など高単価商品を選択する傾向が強く、客単価の向上にも貢献します。

さらに、リピーターからのクチコミ効果は新規顧客の獲得において大きな影響を及ぼします。身近な人からの推薦やクチコミレビューは施設側が発信する広告よりも信頼性が高く、新規顧客が宿泊先を選ぶ際の判断基準となります。

リピート率の高い宿泊施設の特徴

全国の成功している宿泊施設を分析すると、高いリピート率を誇る施設にはいくつかの共通点があることがわかります。これらの特徴を理解し、自社の状況に合わせて取り入れることで、効果的にリピーター獲得が実現できます。

記憶に残る宿泊体験の提供

リピート率の高い宿泊施設では、ゲストの名前を覚える、心のこもった挨拶、細やかな気配りなど、小さな感動体験を積み重ねています。特に大切なのは、チェックアウト時における「最後の感動体験」で、ここでの印象が次回の利用意欲に直結します。

成功施設では、スタッフ全員が顧客満足度の向上を自分事として捉え、マニュアル以上のおもてなしを提供する文化が根付いています。こうした文化は一朝一夕では築けませんが、継続的な人材教育と適切な動機付けによって段階的に実現が可能です。

顧客に合わせた継続的なコミュニケーション

一度の宿泊体験だけでリピートを期待するのは現実的ではありません。顧客データに基づき、セグメント別のメール配信や特別オファーを実施することで、顧客に合わせたマーケティングが可能となります。

特に効果的なのは、顧客の特性に応じた個別のアプローチです。例えば、ゲストの特別な日(誕生日や記念日)に特別なサービスを提供するなど、感動を与える小さな配慮がリピート率の向上につながります。。また、年代や利用目的によって顧客をセグメントに分け、それぞれに最適なコミュニケーション手段を選択することが重要です。

若い世代であればInstagramやTwitterは有効ですが、高年齢層にとってはメールや郵送での案内がより効果的な場合もあります。顧客セグメントに応じた適切な媒体を使用することで、より効果的なコミュニケーションを実現できます。

地域密着型のサービス戦略

宿泊客のリピート理由の第1位は「料金の納得感」、そして第2位が「立地や交通の利便性」となっており、アクセス圏内の顧客の囲い込みはリピーターの獲得の重要な観点です。地域密着型の宿泊施設では、帰省時や記念日利用に特化したプランを提供し、ライフイベントに合わせた提案を行っています。

また、地域の文化や特産品を活用したオリジナルサービスも、他地域からのゲストに特別感を提供し、「また訪れたい場所」として記憶に残る要因となります。

ホテル・旅館のIT活用でリピーターを増やす方法

デジタルツールを効果的に活用することもリピーター獲得の成果を左右します。特に公式アプリの開発や会員制度の充実、SNSマーケティングの強化は、自社予約の増加にもつながる押さえるべきポイントです。

公式アプリと会員制度の創設

公式アプリの導入は、顧客との直接的なコミュニケーション手段を確保し、OTAへの依存度を減らし、顧客情報の蓄積も図れる効果的な施策です。プッシュ通知機能を活用した限定オファーの配信や、アプリ限定特典の提供により、利用者の再訪意欲を高めることができます。

会員制度と連動させることで、宿泊履歴の管理、個別のサービス提供、ポイントプログラムの運用が一元化でき、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できます。また、会員データの分析により、ターゲット層の嗜好や行動パターンを把握し、効果的なマーケティング施策の立案につなげることが可能です。

セグメント連動型のSNSマーケティングの強化

Instagram、Facebook、TikTokなどのSNSプラットフォームは、特にファミリー層や若年層へのアプローチに高い効果を発揮します。美しい写真や動画コンテンツを通じた視覚的な訴求は、非日常体験の魅力を効果的に伝える手段として有効です。

重要なのは、顧客セグメントに応じて適切なSNSプラットフォームを選択することです。20~25歳の層にはTikTokやInstagram、30~40代のファミリー層にはFacebookというように、各セグメントの特性を理解した上で情報発信することで、より効果的なマーケティングが実現できます。

ITによる多言語対応

訪日外国人が日本における不便さを感じる点の1つに言語の壁があります。公式サイトや予約システムの多言語化、多言語対応のチャットボットの導入などにより、言語の課題を克服できれば海外からのリピーター獲得につながります。

特に英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語対応の充実は、アジア圏を中心とした海外顧客のリピート利用に大きく貢献します。言語の壁を取り除くことで、充実した宿泊体験をより多くの顧客に提供できる環境が整います。

ホテル・旅館のリピーター戦略におけるデジタル施策の重要性

高いリピート率を誇る宿泊施設では、優れた接客や立地だけでなく、デジタルツールを活用した顧客管理と再訪促進の仕組みづくりが成功のポイントとなっています。triplaは、予約エンジン・CRM・AIチャットボットを組み合わせ、各施設の課題に合わせたリピーター戦略を支援しています。ここでは、その具体的な事例をご紹介します。

リッチモンドホテルズ:Book×Connectで会員基盤を強化

全国43施設のリッチモンドホテルズとTHE BASEMENT 1施設では、2025年に公式予約システムと顧客管理システムを同時に導入しました。

予約エンジン(tripla Book)は自社サイト上で宿泊プランや料金を直接予約でき、多言語対応やキャンペーン設定にも対応できる仕組みです。一方、CRM/MAシステム(tripla Connect)は顧客データを蓄積・分析し、利用履歴や会員属性に応じたメール配信や特典案内を自動化します。

これらを組み合わせることで、会員組織「リッチモンドクラブ」と連携した情報発信が可能となり、自社予約比率とリピーター率の向上が期待されています。

参考

住友不動産ヴィラフォンテーヌ:多言語チャットとCRMでインバウンドをリピーター化

2024年、住友不動産ヴィラフォンテーヌは全21施設にtriplaのサービスを導入しました。

まず、AIチャットボット「tripla Bot」によって英語・中国語・韓国語など多言語での問い合わせ対応を自動化。これにより、外国人宿泊客が予約や質問をスムーズに行える環境を整え、言語の壁を解消しました。

さらに、CRM/MAシステム「tripla Connect」を活用することで、宿泊履歴や利用状況に基づいたメール配信や会員向けキャンペーンを実施。海外顧客にもパーソナライズされた情報を届けられるようになり、会員組織の拡大と再訪促進につながっています。

参考

長期滞在ニーズに対応したリピーターの獲得

働き方の多様化や旅行スタイルの変化により、長期滞在への対応は新たなリピーター獲得の機会となっています。ワーケーション需要や連泊利用のニーズに応えることで、従来とは異なる顧客層の獲得と、リピート率の向上を同時に実現できます。

長期滞在向けサービスの充実

キッチン付き客室の提供、洗濯機設置、長期滞在割引の導入など、長期滞在者の利便性を向上させる設備・サービスの充実は、ビジネス利用者にも高く評価されています。特に、月単位での利用を想定した料金体系の設定は、新たな収益源につながります。

また、長期滞在者向けの専用ラウンジ設置や、地域イベントやコミュニケーションとのマッチングなど、滞在期間中の満足度を高める付加サービスの提供も重要です。

ワーケーション需要への対応

リモートワークの普及により、仕事と休暇を組み合わせたワーケーション需要が拡大しています。高速Wi-Fi環境の整備、ワークスペースの提供、会議室の貸し出しなど、ビジネス機能の充実は新たなリピーター層の獲得につながります。

平日の稼働率向上にも貢献するワーケーション需要は、閑散期の収益安定化にも効果的です。周辺の観光施設や飲食店との提携プランなどを提供することで、滞在の付加価値を高める工夫も必要です。

まとめ

ホテル・旅館のリピーター戦略において最も重要なのは、スタッフによる記憶に残る宿泊体験の提供と、継続的なコミュニケーションを続けることです。成果を上げている宿泊施設の事例からもわかるように、人材育成への投資とスタッフの自主性を引き出す組織文化の醸成が成功の鍵となります。

ITの活用による顧客の囲い込みも欠かせない要素であり、公式アプリや会員制度の充実、SNSを活用したマーケティングは、OTA依存からの脱却と自社予約比率の向上にも貢献します。また、長期滞在ニーズやワーケーション需要への対応は、新たなリピーター層の獲得と閑散期の収益の安定化が期待できます。

リピーター戦略の成功は一朝一夕では実現できませんが、スタッフによる工夫と継続的な実践により、実績と成果は着実に積み重なっていきます。急増するインバウンド需要をキャッチアップし、安定した収益基盤を築くためにも、今こそ本格的なリピーター戦略に取り組みましょう。

ホテル・旅館のリピーター施策チェックリスト

  • ゲストの名前を覚える、挨拶、気配りなど小さな感動を積み重ねている
  • スタッフ全員がマニュアル以上のおもてなしを意識している
  • メルマガなどで顧客と定期的に接点を持っている
  • 帰省や記念日に合わせたプランを提供している
  • 公式アプリ・会員制度を導入している
  • SNSマーケティングを強化している
  • サイトや予約システムを多言語対応している
  • 長期滞在・ワーケーション利用の対策を行っている

triplaでは、宿泊業務の効率化と顧客体験向上のためのデジタルツールを横断的に提供しています。リピーター獲得に向けた顧客管理や自社予約比率の向上などのお悩みは専任のスタッフに気軽にご相談(無料)ください。