
訪日外国人観光客の増加に伴い、宿泊施設や飲食店では多様な決済手段への対応が求められています。クレジットカードやQRコード決済など、外国人客が使い慣れた支払い方法を提供することは、顧客満足度の向上と売上拡大に直結します。本記事では、インバウンド決済の最新動向から具体的な導入方法、運用時の注意点まで、宿泊施設の運営者が知っておくべき実践的な情報を解説します。
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インバウンド決済とは、訪日外国人観光客が日本国内で商品やサービスを購入する際に利用する決済手段を指します。近年は現金離れが進み、スマホ決済や非接触型支払いの需要が急速に高まっています。
宿泊施設においては、予約時の事前決済から現地でのキャッシュレス決済まで、幅広い場面で外国人客に対応した決済環境の整備が求められています。適切な決済手段を導入することで、顧客の利便性向上とともに業務効率化も実現できます。
インバウンドとは、訪日外国人旅行者のことを指します。観光庁の定義では、日本を訪れる外国人旅行者全般を指し、観光目的だけでなくビジネス目的の渡航者も含まれます。
インバウンド決済では、各国で普及している決済手段が異なるため、来店する顧客層に応じた対応が必要です。中国からの観光客にはAlipayやWeChat Pay、韓国からの観光客にはKakao Pay、欧米からの観光客にはクレジットカードのタッチ決済が好まれる傾向があります。
日本政府は2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人に、インバウンド消費額を15兆円にする政策目標を掲げており、その実現に向けた受入体制の整備の一環として、キャッシュレス環境の改善を推進しています(国土交通省観光庁「観光立国推進基本計画」)。
2024年の訪日外国人旅行消費額は総額で8兆1,257億円と推計されています(観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年暦年(速報)」)。
費目別にみると、宿泊費が33.6%、買物代が29.5%、飲食費が21.5%を占めており、宿泊費が最大の消費項目となっています(観光庁「訪日外国人の消費動向 2024年暦年(速報)」)。一人当たり旅行支出は22.7万円で推移しており、高単価な消費が期待できる市場です。
日本のキャッシュレス決済比率は2023年時点で39.3%となっており、韓国の95.3%、中国の83.8%と比較すると依然として低位にあります。(経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」2024年3月 / 一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2023」)訪日外国人にとっては、自国で当たり前に使える決済手段が日本で使えないことが不便に感じられる要因となっています。
訪日外国人がわが国で利用した決済手段は、現金が94%と最も多く、次いでクレジットカードが70%、交通系ICカードが24%となっています(日本総合研究所「インバウンド需要の拡大と訪日外国人の決済動向」2024年8月)。現金利用は依然として高い水準を維持していますが、これは日本側の受け入れ体制受入体制の不足を反映している面もあります。
訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこととして、クレジットカードやデビットカードが利用しにくい点が挙げられており、観光先によっては未だ現金取引主体で、キャッシュレス対応に改善の余地がある可能性が指摘されています。
2024年2月に実施されたJCBとアメリカン・エキスプレスの共同調査によると、8割以上の店舗が訪日外国人の店舗利用者数の増加を実感しています(JCB・アメリカン・エキスプレス共同調査「キャッシュレスとインバウンドってどうなっている?」2024年2月)。
インバウンド対策では、訪日外国人が自国で使い慣れた決済手段に対応することが重要です。QRコード決済、クレジットカード、モバイルウォレットなど、多様な選択肢があります。
各決済手段には特徴があり、対応する国や地域、利用者層が異なります。自施設の顧客分析を行い、優先順位をつけて導入することで、効果的なインバウンド対策が実現できます。
QRコード決済は、スマートフォンでQRコードを読み取るだけで支払いが完了する手軽さが特徴です。特にアジア圏からの観光客にとっては、日常的に使用している決済手段であり、対応の有無が来店の判断材料になることもあります。
中国からの訪日観光客が多い店舗では、AlipayとWeChat Payの両方に対応することが標準的な対応となっています。Alipayは10億人以上の個人ユーザーを持ち、中国国内のモバイル決済市場で5割程度のシェアを獲得しています。WeChat Payは中国のSNS「WeChat」を運営するテンセントが提供するサービスで、Alipayの最大の競合となっています。
韓国からの観光客向けには、Kakao Payの対応が重要です。Kakao Payは韓国のチャットアプリ「カカオトーク」を活用した決済サービスで、対面のQRコード決済からオンライン決済まで幅広く対応しています。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年3月の訪日観光客は韓国が最も多く663,100人という結果となっており、韓国籍の訪日外国人を集客したい施設にとって重要な決済サービスです(日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」2024年3月)。
国内のPayPayは海外決済との連携が充実しているため、1つの契約で複数国に対応できる利点があります。初期費用や月額固定費が0円で導入できるサービスも多く、小規模施設でも導入しやすい決済手段となっています。
欧米諸国からの訪日客にとっては、VisaやMastercardのクレジットカード決済が最も重要な決済手段となります。特にタッチ決済機能は、非接触型支払いとして普及が進んでおり、スムーズな決済体験を提供できます。
訪日外国人にとっての良いキャッシュレス環境とは、自国で使い慣れた決済方法に対応しているかどうかがカギとなります。中国人観光客にとってはAlipayやWeChat Pay、アメリカ人にはVisaやMastercardのタッチ決済、韓国人にはKakao Payなど、国によって決済文化やインフラは異なるため、来店する顧客層に応じた決済手段を的確に導入することが真の意味でのキャッシュレス対応といえます。
Apple Payをはじめとするモバイルウォレットは、クレジットカードやデビットカード情報をスマートフォンに登録して利用する決済手段です。欧米からの観光客を中心に利用が広がっており、非接触型決済端末があれば対応可能です。
交通系ICカードは、日本国内では広く普及していますが、訪日外国人の利用率は24%にとどまっています(日本総合研究所「インバウンド需要の拡大と訪日外国人の決済動向」2024年8月、観光庁データに基づく)。これは、事前のカード購入やチャージの手間があることや、利用可能な店舗が限定されることが要因と考えられます。
デビットカードは、銀行口座から即座に引き落とされる仕組みで、クレジットカードと同様に国際ブランド付きのものが多く流通しています。VisaやMastercardのデビットカードは、クレジットカード決済端末で対応できるため、追加の設備投資なく受け入れ可能です。
キャッシュレス決済の普及が進む中でも、現金は依然として94%の訪日外国人が利用する決済手段です。特に少額決済や地方の観光地では現金が必要となる場面が多く、完全なキャッシュレス化は現実的ではありません。
宿泊施設においては、現金決済とキャッシュレス決済の両方に対応することで、幅広い顧客ニーズに応えることができます。ただし、現金の取り扱いには管理コストやセキュリティリスクが伴うため、事前決済やキャッシュレス決済を優先的に案内する運用も検討すべきです。
両替サービスを提供する場合は、為替レートの設定や手数料、必要な許認可などを確認する必要があります。多くの宿泊施設では、近隣の両替所や金融機関を案内する対応が一般的です。
インバウンド決済を効果的に導入するには、自施設の顧客分析から始まり、適切な決済サービスの選定、運用体制の整備まで、段階的に進めることが重要です。
導入後の運用では、多言語表示や決済案内の工夫、スタッフ教育などが顧客満足度に大きく影響します。
インバウンド向けキャッシュレス決済の導入を成功させるには、自施設を訪れる外国人客の実態調査から始めます。レジでの国籍確認、予約システムでの国別データ分析を通じて、どの国からの客が多いのか、立地による傾向の違い、客単価や購買行動を正確に把握します。
顧客分析の結果を踏まえ、優先順位をつけて決済サービスを選定することが重要です。中国系客が多い施設ではAlipayとWeChat Payを最優先とし、韓国系客が多い場合はKakao Pay対応のサービスを選択するなど、明確な根拠に基づいた選定が必要です。
導入費用は、対応する決済手段や施設規模によって大きく異なりますが、小規模施設でも月額数千円から始められるサービスが多数提供されています。QRコード決済の場合、多くのサービスで初期費用0円から導入が可能で、決済手数料は1.60%から3.24%程度の範囲となっています。クレジットカード端末の場合、初期費用は2万円から5万円、月額利用料は2,000円から5,000円、決済手数料は2.20%から3.74%程度が一般的です。
多様な決済手段に対応するには、マルチ決済端末の導入が効率的です。1台の端末でAlipay、WeChat Pay、クレジットカード、電子マネーなど、多数の決済ブランドに対応できる製品が増えています。
POSシステムと連携することで、売上管理や在庫管理が自動化され、業務効率が大幅に向上します。決済データがリアルタイムで反映されるため、日次の締め作業も簡素化できます。多くの決済サービスでは、主要なPOSシステムとのAPI連携に対応しています。
オンライン予約サイト向けには、ECサイトとの連携が必要です。tripla Bookのような宿泊予約エンジンでは、140通貨での多通貨決済に対応しており、外国人宿泊者が自国の通貨でクレジットカード決済を行える機能を備えています。顧客のIPアドレスに応じて通貨が自動的に表示される機能により、予約時の離脱を防止する効果があります。
店頭での分かりやすい決済案内表示は、インバウンド客の安心感を高める重要な要素です。各決済サービスの公式ロゴを使用し、英語・中国語・韓国語での併記を行い、レジカウンター、テーブル上、入口付近など複数箇所に設置します。
端末の操作画面が日本語のみでは使いこなせない可能性もあるため、多言語対応の決済端末の導入や、案内ポップの設置なども好印象を与えるポイントとなります。特に「英語+中国語(簡体字)+韓国語」対応があれば、多くのインバウンド客をカバーできます。
多通貨決済を導入する場合、為替レートの管理が重要になります。tripla Bookでは、Adyenの決済プラットフォームと連携しており、宿泊者からの多通貨決済を最新かつ最適な為替レートで受け付けることができます。決済情報は一元管理され、円換算での売上確認も容易に行えます。
QRコード決済の場合、各決済サービスから指定の銀行口座に売上金が振り込まれます。振込手数料や振込サイクルは決済サービスによって異なるため、事前に確認が必要です。一般的には、月2回から4回の振込サイクルとなっており、翌月末払いが多く採用されています。
Tax-Free(免税)対応を行う場合は、決済システムと免税システムの連携も検討すべきです。免税対象の購入額や必要書類の管理を自動化することで、フロント業務の負担を軽減できます。
インバウンド決済を提供する上では、金融規制やセキュリティ基準への適合が必須です。不正取引への対策や個人情報保護など、法的要件を満たした運用が求められます。
適切なセキュリティ対策を講じることで、顧客の信頼を獲得し、チャージバックなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
決済サービスを提供するには、資金決済法に基づく登録や許可が必要です。宿泊施設が決済代行会社のサービスを利用する場合、代行会社側が必要な許認可を取得しているため、施設側での個別の申請は不要となります。
マネーロンダリング対策として、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認や取引記録の保存が義務付けられています。決済代行会社を通じた決済では、代行会社側でこれらの対応が行われますが、宿泊施設側でも取引記録の適切な管理が求められます。
高額取引や疑わしい取引については、金融庁への報告義務があります。決済代行会社と連携し、異常な取引パターンを検知できる体制を整備することが重要です。
クレジットカード情報を取り扱う場合、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)と呼ばれる国際的なセキュリティ基準への準拠が求められます。この基準では、カード情報の保存方法、ネットワークセキュリティ、アクセス制御などについて詳細な要件が定められています。
決済代行会社のサービスを利用する場合、多くのケースで代行会社側がPCI DSS準拠の環境を提供しており、宿泊施設側でカード情報を直接保存しない仕組みとなっています。これにより、施設側のセキュリティリスクとコンプライアンス負担を大幅に軽減できます。
個人情報保護法に基づき、顧客の決済情報や予約情報は適切に管理する必要があります。情報漏洩が発生した場合は、速やかに本人への通知と監督官庁への報告が義務付けられています。定期的なセキュリティ監査やスタッフ教育を実施し、情報管理体制を強化することが重要です。
不正トラベルとは、不正に入手したクレジットカード情報を使用して旅行サービスを予約・利用する犯罪行為です。犯人グループは旅行者から支払い金を窃取でき、クレジットカード会社や宿泊施設は支払い金が受け取れなくなります。日本サイバー犯罪対策センター(JC3)は、不正トラベルの対策として、国から旅行事業の許可を受けた正規旅行事業者を利用することや、クレジットカード情報窃取の手口に注意することを呼びかけています(日本サイバー犯罪対策センター(JC3)「不正トラベル対策の実施」)。
チャージバックとは、クレジットカードの不正利用や商品未着などの理由で、カード会社が取引をキャンセルし、売上金を返金する仕組みです。宿泊施設側に過失がなくても、チャージバックが発生すると売上金が回収できなくなるリスクがあります。
不正検知システムの導入により、決済前に取引の危険性を判断し、リスクの高い取引を事前にブロックすることが可能です。取引データや提供事業者それぞれのノウハウを活用し、不正取引のパターンを学習するシステムが普及しています。
インバウンド決済では、円建て以外の通貨での取引が発生するため、税務処理における為替換算が必要です。法人税法では、外貨建て取引は取引日のTTMレート(電信仲値相場)で円換算することが原則とされています。
領収書の発行においては、決済に使用した通貨と金額、円換算額の両方を記載することが望ましいとされています。多言語対応の領収書テンプレートを用意しておくことで、外国人客への対応がスムーズになります。
消費税の取り扱いについては、国内取引として課税対象となります。Tax-Free(免税)販売を行う場合は、免税店としての許可を受け、所定の手続きを行う必要があります。免税対応を行うことで、外国人客の購買意欲を高める効果が期待できます。
インバウンド決済の導入は、訪日外国人観光客の増加に対応するための重要な施策です。クレジットカード、QRコード決済、モバイルウォレットなど、多様な決済手段に対応することで、顧客満足度の向上と売上拡大が期待できます。
導入にあたっては、自施設の顧客層を分析し、優先順位をつけて決済サービスを選定することが成功のカギとなります。多言語表示やスタッフ教育などの運用面での工夫も、外国人客に安心して利用してもらうために欠かせません。
セキュリティ対策や法規制への対応も重要な要素です。決済代行会社のサービスを活用することで、専門的な知識がなくても安全かつ効率的にインバウンド決済を提供できます。補助金制度も活用しながら、自施設に最適な決済環境を整備していきましょう。