ホテル・旅館の業務改善ガイド|初めてでもできる効率化と収益化の方法

ホテルや旅館において業務改善は、人手不足や多様化する顧客ニーズへの対応といった課題を解決するための重要な取り組みです。本記事では、初めて業務改善に取り組む宿泊施設の運営者や新規参入予定者に向けて、効率化と収益化を同時に実現する具体的な方法を解説します。デジタル化やITシステム導入、業務標準化の進め方から、実践的な施策まで、現場で活用できる情報を提供します。

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ホテルの業務改善で得られる効果

ホテル・旅館における業務改善は、単なるコスト削減だけでなく、従業員の働きやすさや顧客満足度の向上といった多面的な効果をもたらします。ここでは業務改善によって得られる主な効果を解説します。

コスト削減と生産性向上

業務改善の最も分かりやすい効果がコスト削減と生産性向上です。無駄な作業や重複した業務を見直すことで、人件費や消耗品費といった運営コストを大幅に削減できます。たとえば、在庫管理システムを導入することで、アメニティグッズやリネン類の適正在庫を維持でき、余剰在庫による廃棄や欠品によるサービス低下を防げます。

デジタル化による業務の自動化は、スタッフが本来注力すべき接客業務に時間を割けるようにします。予約管理や顧客情報の入力といったバックオフィス業務をシステム化することで、フロントスタッフは丁寧な接客対応に専念できるようになります。このような効率化により、少人数でも高品質なサービスを提供できる体制が整います。

従業員満足と定着率の改善

宿泊業界における人手不足は深刻な課題です。2024年11月に実施されたザイマックス総合研究所の調査では、全国のホテルを対象とした人手不足に関するアンケート(有効回答528件)で、宿泊客対応では73%、宴会・料飲では71%が「とても不足・やや不足」と回答しています。業務改善により作業負担が軽減されれば、従業員の心身への負担が減り、職場環境が改善されます。

マルチタスク化の推進により、1人の従業員が複数の業務を担当できるようになれば、休暇取得がしやすくなり、ワークライフバランスの向上につながります。また、業務マニュアル化と従業員研修の充実により、新人スタッフの早期戦力化が実現し、教育コストの削減と定着率の改善が期待できます。スキルマップを活用して各スタッフの得意分野を把握し、適材適所の配置を行うことで、従業員満足度を高められます。

顧客満足とリピート率の向上

業務改善は顧客体験の質向上に直結します。フロント業務改善によりチェックイン・チェックアウトの待ち時間が短縮されれば、顧客のストレスが軽減されます。客室清掃効率化により清掃品質が安定すれば、顧客満足度が向上し、クチコミサイトでの評価改善につながります。

予約管理システムやPMS(ホテル管理システム)導入により顧客情報を一元管理できれば、過去の宿泊履歴や好みに応じたパーソナライズされたサービス提供が可能になります。たとえば、前回の滞在時に眺めの良い部屋を希望した顧客に対して、次回予約時に同様の客室を提案できます。このような細やかな配慮がリピート率向上につながります。

安全衛生と持続可能性への貢献

業務改善は安全衛生管理の強化にも寄与します。清掃手順のマニュアル化により、衛生基準が明確になり、清掃品質のばらつきが減少します。また、デジタル化によるペーパーレス化は、環境負荷の軽減につながり、持続可能な宿泊施設運営に貢献します。

在庫管理の適正化により、アメニティや食材の廃棄量が減少し、環境配慮と収益性向上を同時に実現できます。こうした取り組みは、環境意識の高い顧客層からの支持を得ることにもつながります。

ホテルの業務改善の進め方

業務改善を効果的に進めるには、計画的なアプローチが必要です。現状把握から課題の優先順位付け、具体的な施策の実行、そして継続的な改善のサイクルを回すことが重要です。ここでは業務改善の基本的な進め方を段階ごとに解説します。

現状把握と業務の見える化

業務改善の第一歩は、現状の業務フローを正確に把握することです。フロント業務、客室清掃、料飲サービス、バックオフィス業務など、各部門でどのような作業がどのくらいの時間をかけて行われているかを明確にします。多くの宿泊施設では、予約管理システム、ホテル管理システム、顧客関係管理システム、会計システムが分断されたまま運用されており、同一の顧客情報を複数のシステムに手入力する無駄が発生しています。

現場スタッフへのヒアリングを通じて、経営層が気づいていない現場の課題を理解することが不可欠です。チェックイン・チェックアウト時間帯のボトルネック、清掃作業のスケジュール管理の複雑さ、多言語対応によるフロントスタッフの心理的負担といった具体的な課題を洗い出します。

業務フローと作業時間の計測方法

業務フローの見える化には、各作業の開始から終了までの時間を計測することが有効です。チェックイン対応、客室清掃、予約確認、問い合わせ対応など、代表的な業務について、平均的な作業時間と繁忙期の作業時間を記録します。この計測データをもとに、どの業務にどれだけの人員を配置すべきかを判断できます。

業務の見える化により、非効率な手順や重複作業、待機時間の発生箇所が明確になります。たとえば、フロントでの予約確認作業に多くの時間がかかっている場合、予約管理システムの導入により作業時間を大幅に短縮できる可能性があります。

課題の優先順位付けと目標設定

現状把握により明らかになった課題について、優先順位を付けることが重要です。すべての課題を同時に解決することは現実的ではないため、効果が大きく、比較的短期間で実現可能な施策から着手します。たとえば、フロント業務のボトルネックを解消することで、複数の部門に波及効果が生まれる場合、その施策を優先します。

目標設定では、具体的な数値目標を設定することが効果的です。「フロント業務の作業時間を30%削減」「客室清掃の1室あたり時間を20分に短縮」「自社予約比率を40%に向上」といった明確な目標があれば、施策の効果を測定しやすくなります。

スタッフの巻き込みと運用ルール作り

業務改善を成功させるには、現場スタッフの協力が不可欠です。経営層や管理職だけで改善案を決定し、一方的に指示するのではなく、現場スタッフの意見を積極的に取り入れる姿勢が重要です。現場で実際に作業をしているスタッフは、業務の問題点や改善のアイデアを豊富に持っています。

新しいシステムやツールを導入する際には、操作方法の研修と運用ルールの明確化が必要です。たとえば、セルフチェックインシステムを導入する場合、顧客への案内方法、トラブル発生時の対応手順、スタッフ間の情報共有ツールの活用方法などを明確にします。運用ルールが曖昧なままでは、せっかくのシステムも効果を発揮できません。

PDCAで定着させる仕組み作り

業務改善は一度実施すれば終わりではなく、継続的な改善が必要です。PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すことで、施策の効果を検証し、必要に応じて改善を加えます。まず計画(Plan)を立て、実行(Do)し、その結果を評価(Check)し、改善策を実施(Act)するというサイクルを繰り返します。

定期的なミーティングを設定し、業務改善の進捗状況を共有することが効果的です。月に1回程度、各部門の責任者が集まり、目標達成状況、発生した課題、改善案を話し合う場を設けます。このような仕組みにより、業務改善が組織文化として定着します。

業務改善の具体的な施策

業務改善の方向性が定まったら、具体的な施策を実行します。ここでは、宿泊施設で効果の高い代表的な施策を紹介します。各施設の状況に応じて、優先順位を付けながら実施してください。

業務の標準化とマニュアル化

業務の標準化とマニュアル化は、サービス品質の安定化と新人教育の効率化に不可欠です。経験やスキルによってサービスの品質に差が生じないよう、基本的な作業手順を明文化します。チェックイン対応、客室清掃、料理提供、クレーム対応など、頻繁に発生する業務については、詳細なマニュアルを作成します。

マニュアル作成時には、ホスピタリティとサービスを明確に分け、サービスの基盤を作りながら、ホスピタリティが生まれる仕組みを構築することが重要です。マニュアルは作成後の定期的な修正や改善が必要不可欠であり、手書きやエクセルでの作成では更新作業に時間がかかります。ITツールを活用し、作成から修正までの手間を減らすことが重要です。マニュアルの共有までがツール内で完結できると、別途ツールを併用する必要もなくなり、効率的な運用が実現します。

シフトと人員配置の最適化

人手不足の中で効率的にサービスを提供するには、シフトと人員配置の最適化が重要です。過去のデータをもとに、曜日や時間帯ごとの繁閑を把握し、必要な人員数を予測します。チェックイン・チェックアウトが集中する時間帯にはフロントスタッフを多く配置し、それ以外の時間帯は最小限の人員で対応できるようにします。

マルチタスク化の推進により、1人の従業員が複数の仕事を並行して担当できれば、人材不足の問題解決につながります。また、マルチタスク対応が可能な従業員が増えれば、他の従業員が休暇を取得しているときでも業務フォローが可能になり、有給取得率の向上にも寄与します。スキルマップを作成し、各スタッフがどの業務に強みを持ち、どの分野でスキルアップが必要かを把握することで、適材適所の配置が可能となります。

客室清掃と備品管理の効率化

客室清掃は宿泊施設運営における最大の人手不足部門の一つです。清掃手順を標準化し、効率的な動線を確保することで、1室あたりの清掃時間を短縮できます。清掃用具や備品の配置場所を工夫し、移動時間を最小限にすることも効果的です。

在庫管理の効率化も重要です。アメニティグッズやリネン類の在庫管理が不十分だと、在庫が不足して顧客への十分なサービス提供ができなくなり、クレームにつながります。一方で在庫が余ると、収益悪化とコスト増加につながります。在庫管理システムの導入により、在庫情報を一元管理し、現在の在庫状況をシステム上で簡単に把握でき、在庫分析機能を用いて適切な仕入れ時期と個数の予測が可能となります。

バックオフィス業務の省力化と外部委託

予約管理、顧客情報管理、会計処理といったバックオフィス業務は、デジタル化により大幅に効率化できます。従来の電話予約を中心とした受付方法では、正確な記録に手間がかかり、受付時間が限定されるという制約がありました。OTA(オンライン旅行代理店)や自社Webサイトの活用により、予約情報を一元管理でき、24時間対応が可能になります。

すべての業務を内製化する必要はなく、専門性が求められる業務や定型業務を外部に委託することで、コア業務に人材を専念させることができます。Webマーケティング、データ入力、予約対応など、専門知識が必要な業務を外部委託することにより、組織の能力を最大限に活用できます。清掃業務の外部委託も効果的な選択肢であり、専門業者に委託することで、清掃の品質向上と人件費の最適化を同時に実現できます。

サービス品質向上のための定型対応とクレーム対策

顧客対応の品質を高めるには、よくある質問や要望への定型対応を整備することが有効です。チェックイン時の説明内容、館内施設の案内、周辺観光地の情報など、頻繁に聞かれる内容については、マニュアル化し、スタッフ全員が同じ水準で対応できるようにします。

クレーム対応についても、過去の事例を蓄積し、適切な対応方法をマニュアル化することで、迅速かつ適切な対応が可能になります。情報共有ツールを活用し、クレーム内容と対応履歴をスタッフ間で共有することで、同様のトラブルの再発を防げます。

業務改善を加速するITとデジタル化

ITシステム導入とデジタル化は、業務改善を加速させる強力な手段です。宿泊業務において改善効果が高い領域は、在庫管理、フロント業務、バックオフィス業務の三分野です。ここでは、デジタル化により実現できる具体的な業務改善策を紹介します。

予約販売と料金管理の一元化

予約管理システムとPMS(宿泊管理システム)の導入により、予約情報を一元管理できます。複数のOTAからの予約、電話予約、自社Web予約など、さまざまなチャネルからの予約情報を統合し、在庫や料金情報をリアルタイムで更新できます。これにより、ダブルブッキングのリスクが減少し、手作業による入力ミスも防げます。

triplaが提供するtripla Bookは、OTA並の使いやすさで自社Webサイト経由の直販予約を促進するシステムです。最短4クリック以内で予約が完了でき、多言語対応(8言語標準対応)、多通貨決済機能を備えており、会員制度とロイヤルティプログラムが標準機能として搭載されています。CMSから国内外のサイトコントローラーと連携でき、在庫・料金情報の一元管理を実現します。

セルフチェックインと決済の自動化

セルフチェックインの導入は、フロント業務の最大のボトルネックを解決する手段として注目されています。チェックイン・チェックアウト対応にスタッフを配置する必要がなくなり、他のフロント業務に集中させられます。利用者側のメリットも大きく、フロントで待たされず手軽にチェックインできることがストレス軽減につながります。

キャッシュレス決済の導入も、業務効率化の重要な要素です。会計業務は複雑で工程が多く、お釣りの渡し間違いなど人的ミスが起こりやすい業務ですが、キャッシュレス決済によりゲストとの現金のやり取りがなくなるので、会計業務がシンプルになり作業効率が向上します。現金の取り扱いがなくなることで、スタッフの負担が軽減され、余力を他の業務に活かせるため、人的コスト削減につながります。

ハウスキーピングと在庫管理のシステム化

ハウスキーピング管理システムの導入により、客室清掃の進捗状況をリアルタイムで把握できます。清掃担当者がモバイル端末やタブレットを使用して、清掃完了を報告すれば、フロントスタッフは即座に情報を確認でき、顧客への客室案内がスムーズになります。また、清掃に必要な時間や清掃担当者の作業効率を分析することで、シフト計画の最適化にもつながります。

在庫管理のシステム化により、アメニティや備品の発注を自動化できます。在庫が一定量を下回ると自動的に発注されるよう設定すれば、欠品を防ぎながら余剰在庫を抑制できます。清掃ロボットの導入により、廊下や共用部分の清掃を自動化することで、清掃スタッフをより細かいサービスに集中させることができます。

従業員間のコミュニケーションとナレッジ共有のデジタル化

情報共有ツールの導入により、スタッフ間のコミュニケーションが円滑になります。顧客からの特別な要望、クレーム内容、設備のトラブル情報など、重要な情報をリアルタイムで共有できれば、適切な対応が可能になります。特に、複数のシフトで運営される宿泊施設では、引き継ぎ情報の共有が重要です。

AI活用により、顧客対応業務を根本的に変革することも可能です。triplaが提供するtripla Botは、宿泊施設に特化した多言語AI応答システムで、8言語標準対応に加え、LINE・WhatsAppなど複数チャネルと連携できます。

導入時の費用対効果と運用上の注意点

ITシステム導入には初期費用と運用費用が発生しますが、補助金制度を活用することで、投資コストを大幅に削減できます。IT導入補助金は、補助率2分の1、補助上限額1施設あたり500万円(1事業者あたり3施設まで)で、システム、設備および備品の購入経費、導入・設置に要する経費、月額・年額使用料金(最大2年分)が対象です。対象となるシステムやツールには、自動チェックイン機、スマートロック、施設内情報表示システム、翻訳・通訳システム、POSレジ、電子宿帳システム、キャッシュレス決済端末、PMS、清掃ロボット、配膳ロボットなどが含まれます。

システム導入時には、スタッフへの研修を十分に行い、運用ルールを明確にすることが重要です。操作方法が分からないままでは、せっかくのシステムも活用されません。また、導入後の効果測定を定期的に行い、期待した効果が得られているかを検証することが必要です。稼働率、ADR(客室平均単価)、RevPAR(1室あたりの収益)といった経営指標の変化を追跡し、導入したシステムの利用状況、スタッフの負担軽減度、顧客満足度スコアなど、多角的な観点から評価します。

まとめ

ホテル・旅館の業務改善は、人手不足や多様化する顧客ニーズへの対応といった課題を解決し、効率化と収益化を同時に実現する重要な取り組みです。本記事では、業務改善で得られる効果、進め方、具体的な施策、ITシステム導入とデジタル化の方法を解説しました。

業務改善を成功させるには、現状把握と課題の見える化から始め、優先順位を付けて計画的に進めることが重要です。業務の標準化とマニュアル化、シフトと人員配置の最適化、バックオフィス業務の省力化といった施策を、各施設の状況に応じて実施してください。ITシステム導入とデジタル化により、予約管理、フロント業務、在庫管理、情報共有といった幅広い業務を効率化できます。

tripla Bookやtripla Botといった統合ソリューションは、自社予約比率の向上、顧客対応の効率化、多言語対応の強化など、多面的な業務改善をもたらします。補助金制度を活用すれば、費用負担を抑えながら対策を実施できます。業務改善は一度実施すれば終わりではなく、PDCAサイクルを回して継続的に改善することで、持続可能で収益性の高い宿泊事業の実現が可能になります。