ホテルや旅館の経営において、閑散期の集客は継続的な課題です。観光シーズンが終わると客室稼働率が大幅に低下し、売上の減少に悩む施設も少なくありません。しかし、適切な戦略を立てることで閑散期でも安定した集客を実現できます。本記事では、データ分析に基づく閑散期の把握方法から、新規ターゲット層の開拓、デジタルマーケティングの活用まで、効果のある対策を体系的に解説します。
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効果的な閑散期対策を実施するためには、まず自施設の閑散期を正確に把握することが大切です。過去3年間の月別・曜日別データを詳細に分析し、客室稼働率や売上の変動パターンを明確にしましょう。
過去の月別収益・客室稼働率データを分析することで、自施設特有の閑散期パターンを把握できます。一般的に、多くのホテル・旅館では1月中旬から2月、6月、11月が閑散期となる傾向があります。しかし、立地や顧客層によってパターンは異なるため、自施設のデータに基づいた分析が不可欠です。
曜日別の稼働変動も重要な指標です。通常、木曜日から日曜日は高稼働率を維持しやすく、月曜日から水曜日は低稼働となる傾向があります。この傾向を把握することで、平日限定プランの策定や週末プランとの価格差の設定に活用できます。
近年はインバウンド需要の拡大により、従来の閑散期パターンが変化している地域も多く見られます。特に、2024年の訪日外客数が3,687万人(前年比+47.1%)に達するほど急増しており、従来の国内需要だけでは予測できない稼働率の変動が起きています。
参照レベニューマネジメントシステム(RMS)の導入により、リアルタイムでの需要予測と価格設定の最適化が実現できます。専用ツールを活用することで、閑散期の予測精度を高め、事前の対策準備を効率的に進められます。
分析項目 | 確認期間 | 重要指標 |
---|---|---|
月別稼働率 | 過去3年間 | 平均稼働率50%以下の月 |
曜日別変動 | 年間通年 | 平日と週末の稼働率の差 |
客単価推移 | 月別・季節別 | 閑散期の価格下落率 |
競合動向 | 四半期ごと | 周辺施設の稼働状況 |
閑散期対策の肝は、従来のメイン顧客層以外の新たなターゲット層を開拓することです。多様化する旅行ニーズに対応した新しい顧客を発掘し、価値提案を行いましょう。
心身の健康やリラクゼーションを目的としたウェルネス旅行やワーケーションなど、新しい旅行スタイルに対応することで閑散期の需要を掘り起こします。特にワーケーションプランは、テレワークの普及により需要が急拡大しており、平日の長期滞在が期待できる有望な市場です。
ウェルネス旅行では、ヨガプログラムや森林浴体験、湯治プランなど心身の回復を目的とした体験型プランの提供が効果的です。日本のウェルネス旅行の市場は、2024年に268.7億ドル(約2.2兆円)と評価され、今後、6.7%の年平均成長率が予測されており、団塊世代をターゲットとした長期滞在プランや、温泉施設活用による健康志向のプログラムも高い需要が見込めます。
参照ミレニアル世代や子育て世代など、世代別の特徴を活かしたファミリー向けプランの開発も重要です。ミレニアル世代には短期滞在でも特別感のある体験を提供し、SNS映えする空間や地域文化との触れ合いを重視したプランが有効です。
また、人口ボリュームが拡大する団塊世代向けには、ゆったりとくつろげる空間演出やバリアフリー対応などが求められます。また、温泉療養や文化体験といった近場での体験プログラムも重要視されます。
子育て世代向けには、授乳室の設置やベビー用品の貸出サービス、屋内アクティビティの充実が求められます。また、ペット同伴旅行の需要も拡大しており、ペット専用アメニティや専用スペースの提供により新たな顧客層の獲得が可能です。
閑散期対策では、宿泊需要に依存せず施設の多目的活用を進めることも重要です。レストラン、会議室、温泉施設などの既存設備を活用し、地域住民や企業向けの新たなサービスを展開しましょう。
MICE(会議・展示会等)需要の取り込みは閑散期の収益向上に大きく貢献します。企業の会議や研修、展示会などのビジネス利用は、一般的な観光需要とは異なる時期に発生するため、閑散期の稼働率向上に効果的です。
企業向けのパッケージプランでは、会議室利用料、食事、宿泊をセットにした料金体系を設定し、長期契約や定期利用の獲得を目指します。
日帰り利用やデイユースプランの充実により、宿泊に依存しない収益源を確保できます。温泉入浴券とランチがセットになった日帰りプランや、会議室とカフェスペースを組み合わせたコワーキングプランなど、多様なニーズに対応したサービス展開が可能です。
結婚式の二次会やワークショップなど、イベント企画も有効です。地域のコミュニティセンターとしての役割を担うことで、継続的な利用者の獲得と地域との関係強化を実現できます。
利用形態 | 対象顧客 | 期待効果 |
---|---|---|
企業研修・会議 | 法人顧客 | 平日需要の創出 |
日帰り温泉・食事 | 地域住民 | 安定的な基礎収益 |
コワーキングスペース | 個人事業主・リモートワーカー | 長時間利用による収益性向上 |
イベント・パーティー | 地域団体・個人 | 新たな収益確保・地域との関係強化 |
閑散期の集客には、デジタルマーケティングの活用が不可欠です。Web広告、SNS発信などの手法を組み合わせ、効率的な集客を実現しましょう。
一度ホテルの公式サイトへ訪問したユーザーに対して広告を配信するリターゲティング広告は、検討段階の顧客を予約へ誘導するための有効な手法です。予約に至らなかった潜在顧客に対し、閑散期限定の特別プランや早期予約割引などの情報を届け、サイトへの再訪問と予約を促します。
Instagram やX(旧Twitter)での体験型コンテンツの発信により、認知拡大を図ります。特典付き宿泊券のプレゼントキャンペーンやハッシュタグの活用により、ユーザーによるクチコミや自然な情報の拡散を狙います。
閑散期の限定プランやイベントといった特典情報を既存顧客にメール配信します。特に、顧客情報を詳細に把握していれば、誕生月のバースデー特典や地域住民へデイリーユースプランの案内など、よりパーソナライズされたマーケティングが可能になります。
閑散期の安定集客には、既存顧客のリピーター対策も重要な役割を果たします。優良顧客との関係性を維持することにより、新規顧客の獲得コストを抑えることも期待できます。
リピーター向けの特典プログラムにより、顧客の再来訪を促進し、客単価の向上も期待できます。来訪回数に応じた客室のグレードアップや無料ドリンクサービス、次回利用時の割引特典などを体系化し、継続利用のインセンティブを提供します。
誕生日月の特別プランや記念日パッケージなど、個人の特別な機会に合わせたパーソナライゼーション施策も効果的です。顧客情報の蓄積と活用により、一人ひとりに最適化されたサービス提供を実現します。
クロスセルやアップセルのスキル向上により、滞在中の顧客満足度と収益性を同時に高められます。食事後のデザート提案や客室・料理のアップグレード提案など、自然に付加価値のある提案ができるスタッフ教育も大切です。
閑散期は時間に余裕ができるため、きめ細かなホスピタリティの改善に取り組み、他社との差別化を実現することで、繁忙期の競争優位性につなげられます。
リピーター施策 | 対象顧客 | 提供価値 |
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会員限定プラン | 既存顧客 | 特別価格・限定サービス |
誕生日特典 | 登録会員 | 記念日の特別感を演出 |
長期滞在者優遇 | 連泊利用者 | 滞在期間延長のインセンティブ |
紹介キャンペーン | 満足度の高い顧客 | クチコミによる新規獲得 |
ホテル・旅館の閑散期対策は、データ分析に基づく現状把握から始まり、新規ターゲット層の開拓、多角的な施設活用、デジタルマーケティングの活用まで、総合的なアプローチが必要です。特に近年のインバウンド需要の増加やワーケーションの普及により、従来の閑散期のパターンが変化していることを踏まえた対策が必要になっています。
効果的な閑散期対策の実施により、客室稼働率の向上だけでなく、リピーター顧客の獲得、地域との関係性の強化、スタッフのスキル向上など、長期的な経営基盤の強化も実現できます。各施設の特性や立地条件に応じて、本記事で紹介した対策を組み合わせ、収益の向上を目指しましょう。
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