ホテル・旅館の稼働率と採算ラインを徹底解説|効果的な改善方法

宿泊施設の経営において、稼働率は収益性を左右する最も重要な指標のひとつです。しかし、単に客室が埋まっているだけでは利益は生まれません。重要なのは、施設ごとの採算ラインを正確に把握し、適切な価格戦略と運営効率化によって収益を最大化することです。本記事では、ホテル・旅館の稼働率の基本的な計算方法から採算ラインの考え方、そして実践的な改善施策まで、宿泊施設の運営者が知っておくべき知識を体系的に解説します。

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ホテルの稼働率の基礎と計算方法

稼働率は宿泊施設の経営状態を測る基本指標です。正確な計算方法を理解し、他の収益指標との関係を把握することで、より効果的な経営判断が可能になります。

稼働率の定義

客室稼働率(Occupancy Rate、OCC)とは、販売可能な客室のうち実際に販売された客室の割合を示す指標です。観光庁が実施する「宿泊旅行統計調査」でも採用されている標準的な指標であり、宿泊業界全体で共通の基準として使われています。

稼働率は宿泊施設の「集客力」を測る指標として機能します。高い稼働率は需要の強さを示す一方、低い稼働率は販売戦略や価格設定の見直しが必要なシグナルとなります。ただし、稼働率だけでは収益性を判断できないため、後述する平均客室単価などと組み合わせて評価することが重要です。

稼働率の計算式

客室稼働率の計算式は以下の通りです。

客室稼働率(%)= 稼働客室数 ÷ 販売可能客室数 × 100

この計算式における「販売可能客室数」には、メンテナンスや改装中で販売していない客室は含まれません。実際に販売できる状態にある客室のみを分母とすることで、正確な稼働状況を把握できます。

ADR・RevPARなど関連指標との違い

稼働率と並んで重要な指標が、ADR(Average Daily Rate、平均客室単価)とRevPAR(Revenue Per Available Room、客室あたり売上)です。ADRは「客室売上 ÷ 販売客室数」で算出され、1室あたりの平均販売価格を示します。一方、RevPARは「客室売上 ÷ 販売可能客室数」または「ADR × 稼働率」で計算され、保有する全客室の収益性を測る指標です。

収益管理において最も重視すべきはRevPARです。なぜなら、稼働率が高くても単価が低ければ収益は上がらず、逆に単価が高くても稼働率が低ければ全体の売上は伸びないからです。RevPARを最大化することで、稼働率と価格のバランスを最適化できます。

たとえば、稼働率80%でADRが8,000円のホテルAと、稼働率60%でADRが12,000円のホテルBを比較した場合、ホテルAのRevPARは6,400円、ホテルBは7,200円となり、ホテルBの方が高い収益性を実現しています。このように、複数の指標を組み合わせて分析することが重要です。

市場浸透率(MPI)や平均料金指数(ARI)の使い方

競合分析に有効な指標として、MPI(Market Penetration Index、市場浸透率)とARI(Average Rate Index、平均料金指数)があります。MPIは「自施設の稼働率 ÷ 競合施設の平均稼働率」で算出され、100を超えていれば市場平均以上の集客力があることを示します。

ARIは「自施設のADR ÷ 競合施設の平均ADR」で計算され、価格競争力を測定します。ARIが100未満の場合、競合よりも低価格で販売していることを意味し、価格設定の見直しが必要かもしれません。これらの指標を活用することで、競合比較に基づいた客観的な経営判断が可能になります。

稼働率から見る採算ラインの考え方

稼働率の目標値を設定する際には、施設の損益分岐点を正確に把握することが不可欠です。ここでは、採算ラインの具体的な算出方法と施設タイプ別の目安を解説します。

採算ラインの定義と求め方

採算ライン(損益分岐点稼働率)とは、収益が費用と等しくなり、利益がゼロになる稼働率のことです。この稼働率を下回ると赤字となり、上回れば黒字となります。採算ラインは施設ごとの費用構造によって大きく異なるため、自施設の数値を正確に把握することが重要です。

損益分岐点稼働率の基本的な計算式は以下の通りです。

損益分岐点稼働率(%)= 固定費 ÷ [(平均客室単価 – 変動費) × 客室数 × 営業日数] × 100

この計算式から、固定費が高いほど、あるいは平均単価が低いほど、高い稼働率が必要になることがわかります。逆に、変動費を抑えることができれば、より低い稼働率でも採算を確保できます。

固定費と変動費の分解と稼働率への影響

固定費には、人件費(基本給与部分)、建物や設備の減価償却費、地代・家賃、借入金の利息、保険料などが含まれます。これらは稼働率に関係なく発生するため、稼働率が低い時期でも負担となります。一方、変動費には客室清掃費、アメニティ・消耗品費、OTA手数料、リネン・クリーニング費、光熱費の変動部分などがあり、販売客室数に比例して増減します。

固定費率が高い施設では、高稼働率を維持しなければ利益を出すことが難しくなります。たとえば、レストランや宴会場などの付帯施設を持つシティホテルは固定費率が高くなる傾向があります。一方、宿泊特化型ホテルは固定費を抑えた運営が可能なため、比較的低い稼働率でも採算を確保できます。

稼働率目標の算出方法(ADR別・部屋タイプ別)

稼働率目標は、平均客室単価や客室タイプによって変わります。高単価の客室を多く販売できれば、低い稼働率でも十分な収益を確保できます。逆に、低単価の客室が多い場合は、高稼働率を維持する必要があります。

例えば、50室の旅館で、月間固定費が800万円、平均客室単価が15,000円、1室あたり変動費が3,000円の場合を例に計算してみます。営業日数を30日とすると、損益分岐点稼働率は以下の通りです。

800万円 ÷(15,000円 – 3,000円)÷ 50室 ÷ 30日 × 100 = 約44.4%

この旅館の場合、月間稼働率が44.4%を超えれば黒字となり、下回れば赤字となります。目標稼働率は採算ラインに安全マージンを加えた水準に設定するのが一般的です。たとえば、採算ラインに10~15ポイントを加えた55~60%程度を目標とすることが考えられます。

施設タイプ別の採算ライン目安(ビジネス・シティ・リゾート)

宿泊施設のタイプによって、一般的な採算ラインは異なります。ビジネスホテルの場合、固定費率が比較的低く、採算ラインは50~60%程度とされています。シティホテルは、レストランや宴会場などの固定費負担が大きいため、採算ラインは60~70%程度に上がります。

リゾートホテルは、広大な敷地や多様な施設を維持するため固定費が非常に高く、年間平均で60~65%程度の稼働率が必要です。ただし、リゾートホテルは季節変動が大きいため、繁忙期に高単価・高稼働を実現し、閑散期対策を講じることで年間収支を確保する戦略が求められます。

宿泊特化型ホテル(エコノミーホテル)は、レストランなどの付帯施設を持たないため固定費率が最も低く、採算ラインは50~55%程度です。このタイプは低コスト構造を活かして価格競争力を持ち、高稼働率を実現しやすい特徴があります。

競合比較とベンチマークの設定方法

自施設の採算ラインを把握したら、次に競合分析とベンチマークの設定が重要です。同一商圏内で同価格帯・同規模の競合施設を特定し、OTAサイトや口コミサイトを通じて稼働率や価格戦略を調査します。日本ホテル協会が公表する「ホテル経営指標」などの業界統計も参考になります。

競合施設の稼働率や平均単価を把握することで、自施設の立ち位置を客観的に評価できます。もし競合よりも低い稼働率であれば、価格設定や販売チャネル、マーケティング戦略の見直しが必要です。逆に、競合よりも高い稼働率を維持できている場合は、価格を引き上げてRevPARを最大化する余地があるかもしれません。

採算ラインを達成するための稼働率改善と収益戦略

採算ラインを把握したら、次は具体的な改善施策の実行です。稼働率向上施策と収益最大化のための戦略を組み合わせることで、持続的な黒字経営を実現できます。

収益管理と価格最適化

収益管理とは、需要予測に基づいて価格を柔軟に変更し、RevPARを最大化する手法です。航空業界で発展した手法ですが、現在では宿泊業界でも広く採用されています。

価格最適化の基本は、需要が高い時期には価格を引き上げ、需要が低い時期には価格を下げて稼働を確保することです。具体的には、週末や連休、地域イベント開催時には高価格を設定し、平日や閑散期には割引プランを提供します。早期予約割引で先々の稼働を確保しつつ、直前割引で空室リスクを最小化する戦略も有効です。

効果的に価格最適化するには、過去のデータ分析が不可欠です。曜日別・月別の需要パターン、地域イベントの影響、競合施設の価格動向などを分析し、最適な価格設定を行います。近年では、AIを活用した自動価格調整ツールも登場しており、リアルタイムでの価格最適化が可能になっています。

販売チャネルとマーケティングで稼働率を上げる

販売チャネルの最適化は、稼働率向上と収益性確保の両面で重要です。OTA(楽天トラベル、じゃらんnet、Booking.com、Expediaなど)は集客力が高い一方、通常8~15%の手数料が発生します。そのため、直販比率を高めることでOTA対策としての手数料負担を軽減できます。

直販強化とOTA最適化の具体策

公式サイトからの直接予約を増やすには、予約サイトよりも有利な条件を提示することが効果的です。具体的には、公式サイト限定プラン、会員限定割引、ポイント付与などのインセンティブを用意します。また、公式サイトの予約導線を改善し、スマートフォンでも簡単に予約できる環境を整えることが重要です。

triplaが提供する予約エンジン(tripla Book)は、スマートフォンに最適化された予約システムとして、予約完了率の向上に寄与します。さらに、AIチャットボット(tripla Bot)は24時間365日の予約対応により予約機会損失を削減し、8言語対応でインバウンド需要の取り込みにも効果を発揮します。

OTAについては、複数の予約サイトに掲載することで露出機会を最大化しつつ、各OTAの特性を理解して使い分けることが重要です。たとえば、楽天トラベルは国内旅行者に強く、Booking.comは海外旅行者に強いといった特徴があります。また、OTAごとのプラン内容や価格を調整し、直販とのバランスを取ることも必要です。

商品化と付加価値で平均単価を引き上げる

稼働率を維持しながら収益を増やすには、平均客室単価(ADR)の引き上げが有効です。そのためには、客室以外の付加価値を提供し、宿泊プラン全体の単価を上げる工夫が求められます。

具体的には、朝食や夕食付きプラン、アーリーチェックイン・レイトチェックアウト、スパやエステなどのオプションサービスをセットにした高付加価値プランを開発します。また、記念日プランやアニバーサリープランなど、特別な体験を提供することで高単価でも予約されやすくなります。

地域の観光資源と連携したプラン開発も効果的です。周辺の観光施設の入場券や体験プログラムをセットにすることで、宿泊施設単体では提供できない価値を創出できます。これにより、リピーター獲得にもつながります。

運営効率化で採算ラインを下げる方法

稼働率を上げることと並行して、運営コストを削減することで採算ラインを引き下げることができます。特に人件費削減は固定費削減の中でも効果が大きい領域です。

業務の自動化・デジタル化は人件費削減の有力な手段です。自動チェックイン機の導入、キーレスシステムによる鍵の受け渡し不要化、AIチャットボットによる問い合わせ対応の自動化は、フロント業務の効率化に直結します。例えば、triplaのチャット接客サービスは、予約前の問い合わせ対応を自動化し、スタッフの負担を大幅に軽減します。

アウトソーシングの活用も効果的です。清掃業務やリネンサービスを外部委託することで、繁閑に応じた柔軟な人員配置が可能になります。また、業務プロセスを見直し、無駄な作業を削減することも重要です。

LED照明への切り替えや空調設備の省エネ化などの省エネ対策により、光熱費の大幅な削減が期待できます。

需要予測とシーズナリティ対策

稼働率の安定化には、需要予測の精度向上と閑散期対策が欠かせません。過去のデータを分析し、曜日別・月別の需要パターンを把握することで、適切な販売戦略を立てられます。

平日の稼働率向上には、ビジネス利用の促進が有効です。法人契約の獲得、テレワークプランやワーケーションプランの提供により、平日需要を創出できます。また、地域イベントとのタイアップや周辺観光施設との連携プランも、平日の集客に効果的です。

閑散期対策としては、オフシーズン限定の特別プランや長期滞在プランの提供が考えられます。シニア層向けのプランは平日や閑散期の需要を取り込むのに適しています。また、直前予約を促進するために、SNSでのタイムセールやラストミニッツオファーを実施することも有効です。

KPI設計とモニタリング体制の作り方

継続的な改善には、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定とモニタリング体制の構築が不可欠です。稼働率、ADR、RevPARといった基本指標に加えて、直販比率、キャンセル率、リピーター率なども重要な指標です。

これらの指標を日次・週次・月次で追跡し、目標値との乖離を早期に発見することが重要です。たとえば、稼働率が目標を下回っている場合は、価格戦略やマーケティング施策を見直します。逆に、稼働率が高いのにRevPARが低い場合は、価格設定が低すぎる可能性があります。

競合分析も定期的に実施し、自施設の立ち位置を確認します。OTAサイトや口コミサイトを通じて、競合施設の価格や評価をモニタリングし、必要に応じて戦略を調整します。また、スタッフ間で数値を共有し、目標達成に向けたチーム意識を高めることも重要です。

まとめ

ホテル・旅館の稼働率と採算ラインは、宿泊施設経営の根幹を成す指標です。客室稼働率の計算方法を正しく理解し、ADRやRevPARといった関連指標と組み合わせて分析することで、収益性の高い経営が実現できます。採算ラインは固定費と変動費の構造によって決まるため、自施設の費用構造を正確に把握し、損益分岐点稼働率を算出することが第一歩となります。

稼働率向上と収益最大化には、ダイナミックプライシングによる価格最適化、直販比率の向上とOTA対策のバランス、付加価値の提供による平均単価の引き上げ、そして運営効率化による固定費削減が重要です。さらに、需要予測に基づく閑散期対策とKPIモニタリングにより、継続的な改善サイクルを回すことで、持続的な黒字経営を実現できます。デジタルツールを活用した業務効率化も、人手不足の時代において競争力を維持するための重要な施策です。