ホテル・旅館におけるDORとは?1室あたりの平均宿泊人数の計算方法と活用法

OCCもADRも悪くないのに、なぜか売上が伸び悩む。そんなモヤモヤを抱える経営者の方は少なくありません。実はその答えは、「1室あたり何人が泊まっているか」という見落とされがちな指標に隠れているかもしれません。

この記事では、ホテル・旅館経営の隠れた重要指標DORの計算方法から、収益改善に直結する具体的な活用法までを徹底解説します。

この記事でわかること
  • DORの定義と他指標との関係性
    DORの計算式や必要なデータを整理し、OCC・ADR・RevPARといった既存の指標とどう連動するのかを理解できます。
  • DORが収益構造に及ぼす本質的な影響
    客室売上だけでなく、料飲・アメニティ・運営コストにまで波及するDORの影響を、利益率の観点から読み解きます。
  • DORを改善する具体的な施策
    客室構成、料金プラン、販売チャネル、アップセルに至るまで、現場で実行可能な改善アプローチを具体例とともに紹介します。

ホテルにおけるDORの定義と計算

レベニューマネジメント(収益管理)の議論はOCCやADRに集中しがちですが、それだけでは見えない収益機会があります。DORという指標を理解することで、自施設の販売実態を立体的に捉えるための新しい視点が手に入ります。

DORの意味を簡潔に説明する

DOR(Double Occupancy Ratio:1室あたりの平均宿泊人数)とは、販売した1室に平均して何人のゲストが宿泊しているかを示す指標です。日本語では「平均同伴人数」「定員稼働率の関連指標」とも呼ばれ、レベニューマネジメントにおいて重要な役割を果たします。

たとえば、定員2名のツインルームを10室販売したとき、宿泊者の合計が16名であればDORは1.6となります。同じ「10室販売」という結果でも、宿泊者が10名なのか20名なのかで、館内消費や運営の負荷は大きく変わります。OCC(Occupancy Rate:客室稼働率)が「ハコがどれだけ埋まったか」を見る指標だとすれば、DORは「そのハコの中身がどれだけ充実しているか」を見る指標と言えます。

ビジネスホテルでは単身利用が中心となるためDORは1.0付近に張り付きやすく、リゾートや旅館ではファミリー・カップル利用が増えるため1.8〜2.5程度に広がる傾向があります。自施設のDORの水準を知ることは、自社の客層構造を客観的に把握する第一歩です。

DORの計算式と必要データ

DORの計算式は非常にシンプルです。以下の式に、日次または月次のデータを当てはめるだけで算出できます。

DOR = 宿泊のべ人数 ÷ 宿泊のべ室数

必要となるデータは、ある期間における「のべ宿泊人数」と「のべ販売客室数」の2つのみです。多くのPMS(Property Management System:宿泊管理システム)には標準で出力機能が備わっていますが、機能が限定的な場合はExcelやスプレッドシートでも十分に集計可能です。

DOR計算に必要なデータと算出例
項目例(1日分)備考
宿泊延べ人数72名大人・子供を含む実宿泊者数
宿泊延べ室数45室販売した客室数(OOOは除外)
DOR1.672 ÷ 45 = 1.6

注意点は「子供のカウント方法」です。添い寝の幼児を人数に含めるかどうかで数値は変動するため、社内ルールを統一しておくことが分析の前提条件となります。

DORとOCC・ADR・RevPAR・LOSの関係

DORは単独で見るより、他の指標と組み合わせることで真価を発揮します。下記のリストは、ホテル・旅館経営における主要指標を整理したものです。

レベニューマネジメントの主要指標一覧

  • OCC(客室稼働率):販売室数 ÷ 販売可能室数
  • ADR(Average Daily Rate:平均客室単価):客室売上 ÷ 販売室数
  • RevPAR(Revenue Per Available Room:販売可能客室1室あたり売上):客室売上 ÷ 販売可能室数
  • DOR:宿泊のべ人数 ÷ 宿泊のべ室数
  • LOS(Length of Stay:平均宿泊日数):宿泊のべ日数 ÷ 宿泊組数
  • 定員稼働率:宿泊のべ人数 ÷ 定員ベース販売可能人数

DORは特に「ADR」「定員稼働率」と密接に関係します。たとえばADRが高くてもDORが低ければ、1人あたりの単価は実は高水準にあるということになりますし、逆にDORが高くてもADRが伸びていなければ、追加料金の徴収機会を逃している可能性があります。LOSが長期化する施設ではDORも安定する傾向があり、両者を併せて見ることで需要の質を把握できます。

DORの測定上の注意点と限界

DORは便利な指標ですが、万能ではありません。最大の注意点は、「平均値」であるがゆえに個別の販売実態をぼかしてしまうことです。たとえばDORが1.5であっても、それが「全室1〜2名利用が均等に混在」しているのか、「ファミリーとビジネス客が二極化」しているのかは平均値だけでは判別できません。

そのため、DORは必ず「人数別の宿泊組数の分布」と併せて分析することが重要です。1名利用・2名利用・3名以上利用のそれぞれの構成比を出すことで、誰に向けたどんなプランが効いているのかが見えてきます。

また、添い寝の子供を含めるか否か、グループ予約をどう扱うかといった集計ルールが施設ごとに異なるため、同業他社との単純比較は難しいという限界もあります。あくまで「自施設の時系列変化」を追う指標として活用するのが王道です。

DORが宿泊収益に与える影響

DORの定義と計算方法を押さえたところで、次はこの指標が経営にどのようなインパクトを与えるかを掘り下げます。DORは単なる「人数の平均値」ではなく、売上・利益・顧客理解のすべてにつながる重要な経営シグナルです。

DORが売上とRevPARに与える具体的な影響

DORが0.1上がるだけで、宿泊売上にどれほどのインパクトがあるか試算したことはあるでしょうか。たとえば100室稼働の施設で、1人追加料金が3,000円、稼働率が80%の場合、DORが1.5から1.6に上昇すると、1日あたり24,000円、月換算で約72万円、年間で約876万円の追加売上が生まれる計算になります。

これに加え、料飲売上(朝食・夕食・館内レストラン)、アメニティ販売、館内施設の利用料なども連動して増加します。DORの改善は、客室単価を上げずに1室あたりの収益を底上げできる、極めて費用対効果の高いレバー(てこ)なのです。

RevPARに換算すると、DOR向上による1人追加料金は実質的なADR上昇として現れます。同じ稼働率・同じ基本料金でも、DORが高い施設の方がRevPARは確実に伸びていきます。

DORがGOPと利益率を左右する仕組み

DORは売上だけでなく、GOP(Gross Operating Profit:営業総利益)にも大きく影響します。客室を1室販売する際に発生する固定的なコスト(清掃費、リネン費、光熱費、フロント対応工数)は、宿泊人数が1名でも2名でもほとんど変わりません。

つまり、DORが上昇するということは、同じコスト構造のままで売上だけが積み上がるということです。1人追加料金から発生する追加変動費(朝食原価、アメニティ原価など)を差し引いても、限界利益率は通常の客室販売よりはるかに高くなります。

慢性的な人手不足に悩む宿泊業界において、「稼働率を上げる」よりも「1室あたりの売上を上げる」方が、現場負荷を増やさずに利益を伸ばせる現実的な選択肢となるケースは多いものです。

DORで把握する客層と需要予測への活用

DORの推移を客層別・曜日別・季節別に追うと、自施設の需要構造が立体的に見えてきます。たとえば平日のDORが1.1で週末が2.2であれば、平日はビジネス単身、週末はカップル・ファミリーという二極構造になっていることが定量的に確認できます。

この理解は需要予測の精度を大きく押し上げます。「来月の週末はDOR2.0前提で朝食原料を発注」「平日朝食は単身向けに簡素化」といった運営判断が、勘や経験ではなくデータに基づいて行えるようになります。観光庁の「宿泊旅行統計調査」によれば、2019年から2024年にかけて訪日外国人延べ宿泊者数は大幅に変動しており、客層の構造変化はDORにも如実に反映されます。

指標モニタリングとKPIへの組み込み方

DORを経営に組み込むには、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の一つとして定期的にモニタリングする仕組みが必要です。月次の経営会議でOCC・ADR・RevPARと並べて報告する、現場スタッフの目標にも反映する、といった運用が効果的です。

具体的には、ダッシュボード上で「日次DOR」「客層別DOR」「プラン別DOR」を可視化し、目標値との乖離を即座に把握できる体制が望ましいでしょう。指標を見える化することで、現場の「もう1人追加してもらおう」という意識が醸成されます。

ホテルでDORを改善する具体的施策

ここまでの議論で、DORが収益に与える影響の大きさはご理解いただけたかと思います。続いては、実際の現場でDORを引き上げるために、どんな打ち手があるのかを具体的に見ていきましょう。施策は客室・料金・販売・運営・分析の5つの軸に整理できます。

客室構成と客層ターゲティングの見直し

そもそもの客室タイプの構成がDORの上限を決めています。シングルルームが全体の80%を占める施設では、構造的にDORは1.0に近づきます。リノベーションや改装のタイミングで、ツインルーム化、コネクティングルーム化、3〜4名定員のファミリールーム化を検討することで、DORの天井そのものを引き上げられます。

同時に、誰をメインターゲットにするかの再定義も不可欠です。ビジネス客中心の施設であれば駅からのアクセスやWi-Fi環境、ワークスペースや会議室の有無を訴求軸とし、レジャー客を取り込みたい施設であれば家族で過ごせる広さや子連れ歓迎のサービスを前面に打ち出します。客層と客室構成のミスマッチを解消することが、DOR改善の出発点です。

料金とプラン設計で同伴利用を増やす方法

料金設計はDORを動かす最も即効性のある施策です。1名利用と2名利用の価格差を適切に設計することで、「1人で泊まるよりお得感がある2人プラン」を演出できます。具体的には、2名利用時の1人あたり料金を割安にする「2名以上限定プラン」、子供添い寝無料プラン、3名以上のグループ割引などが有効です。

また、「同伴係数」を意識したセット販売も効果的です。記念日プラン・カップルプラン・女子旅プランなど、複数名での利用を前提にしたパッケージは、自然とDORを押し上げます。プラン設計の段階で「何人で泊まってほしいか」を意識することが、DOR改善の第一歩です。

OTAと自社サイトでの情報設計と販売戦略

販売チャネルでの見せ方もDORを左右します。OTA(Online Travel Agency:インターネット上の旅行予約サイト)では1名料金が前面に出やすいため、複数名利用の魅力が伝わりにくい構造があります。一方、自社公式サイトでは、写真・コピー・プラン構成を自由に設計できるため、ファミリーやグループ向けの訴求を強化しやすいという強みがあります。

そこで重要になるのが、自社ホームページの予約導線そのものの質です。せっかく「家族で泊まりたい」と思ってもらえても、予約画面が使いにくければ離脱されてしまいます。自社ホームページの販売価格をベストレート(公式サイト最安値保証)に設定し、OTAより魅力的な条件で予約完了まで導く仕組みが、DOR改善と自社予約比率向上を同時に実現します。

たとえばtripla Bookを導入した城崎温泉の老舗旅館「三木屋」では、外国人ゲストを含む多様な客層にも対応できる予約環境を整え、自社経由の予約獲得を強化しました。最短4クリック以内で予約完了に至るUI(操作画面)と、34通貨でのクレジットカード決済対応、8言語(日本語・英語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語・タイ語・インドネシア語・アラビア語)に対応した多言語表示が、ファミリーやカップルなど複数名利用の取り込みを後押ししています。インバウンドゲストは1名利用よりも複数名利用が多い傾向があり、海外発行クレジットカードの承認率改善とあわせて、DORと客室売上の同時改善に寄与する設計といえます。

宿泊中のサービスとアップセルで人数を増やす方法

予約後・チェックイン時のアップセル・クロスセルもDOR改善に直結します。たとえば、「お連れ様の追加はチェックイン当日でも可能です」と明示しておくことで、当日の同行者追加に対応できます。また、ベッドの増設プランや子供向けアメニティセットの事前案内なども、グループ利用を後押しする要素となります。

さらに、館内イベント(季節の食事プラン、地元体験ツアー)を複数人参加前提で設計すれば、リピート時に「次は家族や友人と一緒に来よう」という動機付けにもなり、中長期的なDOR向上につながります。

データ分析とシミュレーションで施策効果を検証する

DOR改善施策は、必ず効果検証とセットで運用すべきです。プランごとのDOR、曜日別DOR、チャネル別DORを定期的に集計し、どの施策が効いているかを定量的に把握します。施策実施前後でDORがどう変化したか、売上・GOPにどう波及したかを月次で振り返る習慣をつけることで、改善サイクルが回り始めます。

分析の際には、DORの変動が客室構成の変化によるものなのか、料金設計の変化によるものなのか、それともマーケットの需要構造そのものの変化によるものなのかを切り分けることが重要です。要因分解ができれば、次に打つべき施策の優先順位も明確になります。

まとめ

この記事では、ホテル・旅館経営における重要指標DORの定義・計算方法から、収益構造への影響、そして具体的な改善施策までを解説しました。DORはOCCやADRに隠れがちですが、稼働率を無理に上げずとも収益を底上げできる、極めて効率の良いレバーです。客室構成・料金設計・販売チャネル・アップセル・データ分析という5つの軸を、ぜひ自施設の状況に合わせて点検してみてください。

すべてを一度に変える必要はありません。まずはDORを継続的に測定し、自施設の数値を「知る」ことから始めてみてください。小さな数値の変化が、年間数百万円の利益改善につながる可能性があります。

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